ゲネと、写真撮影

 昨日は仕込みと場当たりで頭の中が4サイクルエンジンの燃焼室みたいになった。
 結局夜の三時に眠ったのだが、実家に帰ったため、年老いた母に朝の七時に叩き起こされてしまい、四時間しか眠れなかった。

 劇場には九時に行くつもりだったが、自分の衣装をまだそろえておらず、探しに行くために都会の片隅をうろちょろし、十時半に小屋入りした。
 オギノ式が舞台の上でいびきをかいて寝ていた。すぐにいびきをレコーディングする。

 レコーディングしたいびきを客入れの音響に使おうとしたが、オギノ式が泣いて止めた。

 ゲネプロ前の稽古にて、細かい段取りや出はけの確認をする。ロビーでは望月が「はさみ込み来ないっすよ」と欠伸していた。
 夕方、突然ダイナマイトが爆発した。何事かと思って入り口を見ると、ダイナマイト写真ガイ浅香真吾が夕方なのに朝日をバックに仁王立ちしていた。
 「…お待たせかい?」
 「い、いや、そんなことないけど…」
 浅香はサングラスを外し、劇場の八十八箇所に三脚を立て、身を清め始めた。

 七時にゲネプロ。(リハーサルっすね)
 しのちゃんと健ちゃんと丸ちゃんのシーンが日を追うごとに面白くなっていく。
 今日はかなり面白かった。

 しかし、ハプニングらしいハプニングもなく、体力勝負で乗り切ってみてから初めて気づいたのだが、今回のメンバーの平均年齢って、もしかするとかなり高いかもしれない。
 たぶん約26歳だ。
 オリンピックのサッカー代表の平均年齢より高いじゃないか。
 結婚して子供がいてもおかしくないじゃないか。
 それなのに体力勝負で乗り切ろうとするなんて、まるで24時間テレビのマラソン状態じゃないか。

 何てことを考えていると劇場のあちこちからシャッター音。浅香の仕掛けたカメラが劇場をパパラッチロボに変形させていた。
 ゲネは無事終了。いくつかの駄目出しを胸に秘め、「ものは相談なんですが」でおなじみの千葉さんと、バイトで絵のモデルをやってるくぼっちに、照明と音響の駄目出しをする。(大したことはなかったが)
 役者を集合させると、一同疲労困憊の極みだったので、難しいことは言わずに解散宣言を発令する。

 なのになぜ僕達は「魚民」に行ったのだろう?
 「…ここは…?」
 「…魚民さ」
 「何だ、浅香か」
 「…お疲れ…」
 「お疲れ様」

 何しろ浅香ときたら、11年の付き合いだ。俺が大学時代、初めて書いた台本から全部知っている。
 だから、七年前に上演した「断末魔の轟木氏」も見ている。
 しかも、マグネシウムの旗揚げと第二回公演では制作として参加している。
 マグネシウムリボンの「ゆるゆるネットワーク」のメンバーの一人だ。
 今回は再演とは言うものの、100パーセント書きなおしているので、新作と同じである。
 とはいえ、モチーフは同じだったりする。出かた、見せ方が変わっていると言ったところか。
 彼の意見はやはり千斤の重みがあった。

 帰りの電車では、しのちゃん、丸ちゃん、オギノ式、浅香と一緒になった。
 みんなヤケクソのように元気だ。
 俺は浅香の意見を咀嚼するのに忙しかった。
 吉祥寺駅で皆と別れ、一人になってからも考えていた。
 まあ、そんなに深刻な事柄ではないのだけれども。
 しかし、考えていたら眠くなり、武蔵小金井を寝過ごし、国分寺まで行ってしまった。
 帰宅は一時。