食欲は衰えず

 昼、稽古場に行くと、管理人の親父に昼飯を没収された。
 「音楽室は飲食禁止である。したがって持ちこみ禁止である」
 そう言うことなら事前に言ってくれよと思いながら、管理人室の前に昼の弁当を置いて音楽室のある地下に降りていくと、米倉がいた。
 「わたし、水、取り上げられました」
 鬼だ。ジュースならともかく、水を取り上げるとは何事だ。

 非常に嫌な気分になったが、外に出て階段に座り、平光君と話しながらパンを食うのもなかなかオツなもんだった。
 音楽室に戻るとき、管理人室の前で不必要に大きな声で
 「あー、すっげえうまかった!」
 と言ってやった。ざまあみろ。

 しかし、先週の日曜日に来たときにはそんなこと言われなかったのに、なぜ今日に限って厳しく言われたのだろう。
 もしかすると先週、音楽室に備え付けてある監視カメラに向かって「ばーかばーか」とか言って遊んでたのが良くなかったのかもしれない。
 役人とは喧嘩をするなって言うもんな。

 健ちゃんは顔を緑色にして登場。ここまで疲労困憊しているのを見ると、もはや笑えない。
 かわいそうなのを通り越して笑ってしまう状態を、さらに通り越してしまっている。
 今日の顔色が緑なら、本番直前は何色になるのだろう?

 稽古の即興で、「この中にスパイが一人いる」という兵隊コントをみんなで作った。
 健ちゃん、げらげら笑っていた。少し安心。

 稽古後、中野駅まで歩き、愛する「大勝軒」のつけそば大盛りを食う。
 食い終わった後、いつもと同じようにカラの丼に向かって「愛してるよ」と挨拶。
 今年の年越しそばは、ここのつけそばにするつもりだ。中華だけどね。
 何しろ俺はそばアレルギーだから、日本そばは食えないのだ。
 
 「好きなのに食えない悲しさがわかるか」
 何度この台詞を口にしたことだろう。
 でも、そうなのだ。
 俺はそば好きなのだ。小さい頃はざるそばが大好物だった。
 なのに、今は食えない。食うとじんましんが口の中一杯にできる。
 何て悲しいさだめだろう?
 好きなのに食えない。好きなのに一緒になれない。
 まるでロミオとジュリエットじゃないか。

 夜、実家に帰る。今のところこのHPの更新は実家のパソコンでやっている。
 だから実家に帰らないとこの日記も更新できないのだ。

 しかも実家に帰ると必ず「食べきれなかった食材」の整理が俺に回ってくる。
 賞味期限切れ寸前のザーサイとか春巻きとか、そう言うのが4人前くらい目の前に出てくる。

 「あんたがいると捨てなくていいから助かるわ」
 「母さん、僕は夢の島かい?」

 とにかく、先月も危うく腐った白菜漬けを食わされるところだった。
 油断も隙もない。
 そして明日の朝もきっと、予断を許さない。