弁当にイナゴの佃煮

 今月になってから何度目の雨だろう。まるで梅雨みたいだ。
 東京における秋から冬への移り変わりは、もっと乾いたものだったはずなのに。

 仕事の後、実家に帰る。母が四国巡礼の旅に出かけ、冷蔵庫に俺が食わないと腐るであろう食材が色々あったのだ。
 とりあえず高いものからやっつけていこうと思い、夜はいくら丼を食った。
 母不在の実家は静かだ。安心して物思いにふけったりできる。

 しかし、困ったもんだ。食わないなら買わなきゃいいのに系の食い物が色々ある。
 白菜漬け、納豆、イクラ、魚、かまぼこ、昆布巻き、なぜかチャーシュー。
 処理班としては、なま物を優先させるべきだろう。とりあえず明日の朝は納豆だ。昆布巻きもその時にブッ殺そう。

 思えば、昔から苦労してきたものだ。
 8歳の時など、梅雨時に賞味期限切れのコーヒーゼリーを食わされ、40度の熱を出したっけ。
 自然、防衛本能が働き、冷蔵庫チェックは俺の第二の天性になってしまった。
 余りもので作るおかずが、妙に得意になったりする。

 また一つ思い出した。高校の時、弁当のおかずにイナゴの佃煮を入れられたことがある。
 しかも真夏に。
 そりゃ俺は好き嫌いなく何でも食べるが、クーラーの効いてない7月の教室で、弁当のふたを開けたらイナゴの佃煮が入っているという状況を、嬉しがる長男がいるのだろうか?
 隣の席に座ってた女の子が、何か言おうとしてやっぱり黙っていたのが凄くショックだったぞ。
 せめて何か言ってくれと思った。