葛西の危険度

 出産間近の妹は、体の調子が悪かったらしい。何しろ実家と二駅しか離れていない町に住んでいるので、いざとなったらすぐにコブつきで避難してくるわけだ。
 その、今年2歳になるコブだが、朝の6時に目を覚まし、早速タイガー・ジェット・シンばりに大暴れを始めた。
 缶をひっくり返し、ボールペンを分解し、ビデオのリモコンを自分の宝物隠しスポットに収納し、ミカンといよかんを同じ籠の中に入れてワケわからなくし、その勢いは昼寝の時間までとどまることがなかった。

 稽古が休みの俺としては、紅茶など飲みながらゆっくりと台詞の確認などしたかったのだが、どうも、そういうわけにはいかなかった。
 若いっていいなあとは思うが、若すぎるのはどうも。

 妹は夕方帰って行った。2月の初旬に第二子出産予定とのこと。
 「名前考えなきゃね」
 などと言いながら漢和辞典をめくっていたが、ちょっと待て妹よ。漢和辞典で決めるのか?

 夜、実家周辺を走る。
 昔に比べると葛西という町も変わったもんだ。
 今も昔もデンジャラスだが、昔のデンジャラスはその対象が違った。
 野良犬とか海鳥がデンジャラスだった。
 ちなみに俺は12歳の頃、南葛西でカラスに襲われた。
 そして13歳の頃、まだ造成中だった葛西臨海公園で、海鳥の群れに襲われた。

 マラソン途中、江戸川区の南部を切り取るかのように流れる運河、新川沿いを走る。
 この川沿いに俺の通っていた船堀幼稚園があるのだ。
 当時はドブ川のように汚い川だった。
 今もドブ川のように汚い。
 なぜだ新川? お前、向上心あるのか?
 親水公園化するという噂があったのだが、どうなったのだろうか。
 あっても意味がないし、いっそ埋め立てて土地を利用した方がいいのではないかと思った。

 軽い気持ちで始めたのに、いつの間にか「健一のなつかしスポットめぐりマラソン」になってしまい、45分も走ってしまった。
 家に着いたのは10時。
 体重計に乗ると、マラソン直前に比べて1キロ増えていた。
 ちょっと待てオムロン。お前、俺をバカにしてるのか?