平成元年の空手チョップ

 本棚の整理中、なかなかとんでもない本を発見した。
 夢枕獏著、「平成元年の空手チョップ」
 現代に蘇った力道山が、前田日明と戦うというストーリーである。
 「青春と読書」に連載されていたらしい。

 連載当時は新生UWFが東京ドームで興行を行った直後であり、前田と戦うという設定に説得力があったのだが、新生UWFはなんと連載中に崩壊してしまったのだ。
 獏さんは小説と現実のリンクを諦め、小説内の時間を平成元年に固定することで何とか話を続けた。
 連載が終了したのは、92年の冬。
 前田ではなく、高田の時代だった。

 リアルタイムに連載を読んでいればひたすら虚しかったに違いないお話である。
 しかし、既に前田も船木も山崎も引退し、UWFをめぐる歴史が一つの輪として閉じられた現在に読んで見るとなかなか面白い。

 それよりも読みどころは、何と言っても前田と力道山戦の前座に組まれた、猪木と馬場の試合である。
 「馬場は本当はガチンコも強い」という幻想が炸裂している。
 裏16文キックという技も出てくる。
 バーボンのボトルの首を、真っ二つにする技なのだ。
 しゃ、社長、その技ならヒクソンも!

 なかなか興奮する本なのだが、現在は廃刊されているのではなかろうか?

 そういえばもう1冊レアな本を持っている。
 前田日明著、「誰のために生きるか」
 PHP文庫である。

 この本の凄いところは、一人称で書かれた前田本なのに、主語が「僕」になっているところと、文体が標準語であるところ。
 Uインター時代の高田に対して、
 「UWFの時に、僕がもっとやさしく包み込んであげれば良かったのかな…」
 と書いている。
 包み込むって、それ、技じゃないんか?

 これも、既に廃刊では?

 本とコーヒーの平日を過ごし、夜は少しマラソンをした。
 先週ほど長くは走らず、ほどほどにしておいた。疲れがたまるといけない。