稽古最終日

 「ライトニング」サクサク読み進む。
 タイムパラドックスを描いたSFは数多いが、この作品ではその説明が分かり易くなっており、一般の読者への敷居が低い。おかげでこのところSFを読んでいなかった俺にとって、程良いリハビリになっている。

 夕方7時から小金井にて最後の稽古。照明の村上と音響オペの臼井さん来る。
 気のせいか喉がいがらっぽかった。
 花粉症の前兆だろうか。

 阿部君とのシーンが実は全然できていない。どういうわけかそのシーンはほとんど稽古することなく今日まで来ているのだ。
 当然通しをやる時は毎回不安で一杯である。
 結局今日の通しでもそのシーンは大失敗に終わった。
 「阿部君、劇場に入ったら、絶対何とかしようぜ」
 「ええ。楽しみが増えたと思いましょう」
 二人で誓いを交わしたが、阿部君は他の人との絡みも多く、当然同じような約束をほかの役者とも交わしているに違いない。
 ふと、浮気をされているような気分になる。

 通しの後、稽古場の後かたづけをしていると、臼井さんに突然言われた。
 「昨日の夜、ラーメン食べに行ったんですね」
 なんだか結婚記念日までに5キロ痩せる宣言をした夫のような気分になり、「おいおい冗談はよしてくれよナンシー、僕はずっと君の隣でいびきをかいて寝てたじゃないか」と言いそうになったが、当然言わなかった。
 そして臼井さんの名前はナンシーじゃなかった。

 「実はうちの母がマグネシウムのホームページをよく見ているんです」
 「へえ。そうなんだ」
 「それで今朝、私に報告してくれたんです」
 「なるほど。そして今君はそれを僕に向かって報告している」
 まるで輪廻のようだねと言いそうになったが、当然言わなかった。

 飯野、東さんと途中まで一緒に帰る。
 電車の中で格闘技界の展望を語り、鈴木みのるの今後を憂えた。