台本のシーンいろいろ考える

 仕事をこなしながら、色々なシーンが浮かんでは消えていく。
 メモを取らずに、思いつくままに放っておくので、一日の終わりには忘れてしまう。
 夕方まで覚えているシーンなどはむしろ珍しい。
 覚えているシーンをメモ代わりに記しておこう。

 腹ぺこの人間というシチュエーションは、実は結構面白いということに気がついた。
 もちろん、空腹が限界を超えると、普通の人間は立っていられなくなるので、芝居的には面白くない。
 それじゃあ、食っても食っても腹が減るというのはどうか。
 これも、過食症ということになってしまう。

 もしも空腹が恐ろしく苦手な人間がいたらどうなるだろう。
 高所恐怖症の人間は高いところに登ると心拍数が光通信の株価ばりに乱高下する。
 空腹恐怖症の人間も同じである。
 彼はどうやって生きていくのであろうか。

 空腹が怖くて仕方ないから、会議が長引いたり、行列の出来る店に並んでいたりすると、段々顔が青ざめてくる。
 何よりも恐ろしいのは自分のお腹が鳴ることだったりする。
 グー、で、ぎゃー!、である。

 「参ったよ。昨日夜中に腹が減っちゃって、怖くて眠れなかったよ」
 「そんなに怖いなら、沢山食ってから寝ればいいじゃねえか」
 「それが駄目なんだよ。俺、食が細いから」

 空腹恐怖症なのに食が細い。
 まさに悲劇である。

 そんな彼がある女性と運命の出会いをする。
 彼女も自分と同じく、空腹恐怖症だったのである。
 まさに運命である。

 しかし、社会とは常にアウトローを枠外にスポイルしようとするものである。
 このままじゃいけないと考えた二人は、恐怖症を克服しようと決心する。

 恐怖症の克服。
 それは、ただ単に腹をすかせてお腹をグーグー鳴らすことである。

 女「あたし、もう駄目!」
 男「何を言ってるんだ、まだ始めたばかりじゃないか!」
 女「でも、お腹が鳴るなんて、お腹が鳴るなんて、そんなのイヤ!」
 男「怖いのは僕だって一緒だ」
 女「怖いだけじゃないの」
 男「何だい?」
 女「恥ずかしいの」
 男「二人きりで何を恥ずかしがることがあるんだい」
 女「じゃあ、ずっと一緒にいてくれるよね?」
 男「もちろんだとも」

 女は突然身をこわばらせる。

 女「大変!」
 男「どうした」
 女「お腹がすいた!」
 男「とうとうすいたか!」
 女「怖い! 気持ち悪い! 恥ずかしい! お腹すいた!」

 恐怖と嫌悪感と羞恥心と空腹とで、彼女はパニックである。
 何だか初めてのお産を迎えるみたいだ。
 違うのは、男も同じ目に遭うということである。
 彼女の手を握る彼の手も、じっとりと汗ばんでいたりするのだ。

 最初の空腹感をなんとか乗り越えた彼女は、普通の人間の10倍も腹が減った気分だ。

 男「大丈夫かい?」
 女「ありがとう。何とか第一陣はやりすごせたみたい。それよりあなたの方こそ大丈夫? 顔が青いわよ」
 男「実はさっきから、吐きそうなんだ」

 これもよくわからん。
 空腹が怖くて吐きそうになる?
 吐いたらますます空腹になるのではないか?
 生きていけるのかそれで?
 そんな彼を瞬時に理解できるのは、同じ苦しみを分かち合う彼女だけだったりするのだ。

 女「いつもそうなるの?」
 男「ああ、情けないことにね…どうやら空腹が近づくと俺の胃は、小さく縮こまって機能を停止するらしい。この吐き気はその前兆だ」
 女「吐いたらどうなるの?」
 男「三日は腹が減らない」

 吐き気をこらえる男。まるでつわりに苦しむ妊婦のようだ。
 それを励ます彼女も、空腹の恐怖と戦っているのだ。
 おお、愛の至上!

 ちなみに二人は、信頼する友人に鍵を渡し、翌日の昼になったら鍵を開けてくれるように頼み、自分たちをとある部屋に軟禁していた。
 外側から南京錠で鍵をかけ、一日経たなければ出られないのである。
 もちろん食料は一切持ち込んでいない。

 運命は二人を過酷なまでにもてあそぶ。
 翌日の昼になっても、その友人はやってこなかった。
 ちなみに二人とも携帯電話を持ってきていない。
 出前を取ったりしないようにである。

 恐怖症というものは精神に密接に関わっているので、こういった荒療治が逆効果であるのは自明のことである。
 二人は、翌日になって本格的に腹が減り、腹の虫がグーグーなるたびにギャーギャー叫び、しかもマジで腹も減っており、洒落にならない状態になっていく。
 

 と、まあ、こんな感じのシーンを考えた。
 「ギョーザ大作戦」に登場するかどうかは、今のところ未定である。

 さて、日記に戻ろう。
 夜、昼のうちに考えていた色々なシーンなどを整理する。
 そして文章にまとめてみる。

 それがこれである。

 「ターン」もう少しで読み終わりそうだ。
 透明感のある女の人が出る小説を立て続けに読むと、自分がフナムシのような野郎に思えてくる。
 よし決めた。
 今年の抱負は、「俺自身の透明度もフォトショップでレタッチ!」