餃子計算機

 すっかり暖かくなったのは構わないが、この日付でこの暖かさだと、花粉の量が飛躍的に増大するから困る。
 今朝の花粉は凄かった。
 雪かと思った。

 このペースで気温が上がっていくとしたら、桜の開花は去年より早いかもしれない。
 酒だ酒だ。

 夜、久しぶりに田中智保ちゃんから電話。
 開口一番、
 「今、家路についているのだけど、道に迷っているの」

 「ギョーザの芝居はどう?」
 「いやあ、煮詰まってるよホント。1月からギョーザのことばかり考えてるだろ。もう見るのも嫌。だから全然食べてないんだよね」
 「駄目じゃないの。そういう時はおいしい水餃子を食べるとかしないと」
 「でもこの前、「王将」で餃子定食を食ったよ」
 「ならいいじゃないの」
 「とんでもない。ラーメンセットにしたいところをぐっと我慢して、震える声で頼んださ。『ギョ、ギョーザ、定食、ひとつ』」

 しばらくギョーザ話。
 話すうちに台本のアイディアがぱっとひらめいた。
 「わかった!」
 「えっ? 何? 何?」
 「ギョーザの材料計算機を開発している研究室の話!」
 「どういうの?」
 「その研究室では、電卓みたいな『餃子計算機』を開発しているのだけど、計算した材料で餃子を作ってもうまくないんだよ」
 「うん」
 「それで、どうやったらおいしい餃子になるのかを考えるんだけど、焼き方とかじゃなくて、計算式に駄目出しをするの。たかが餃子の材料計算なのにめちゃめちゃ難しい方程式とか使ってさ」

 やはり、人と話している方がアイディアが出やすい。
 智保ちゃんに礼を言い、電話を切る。

 計算機を作る人々というのは面白いのでどこかに使おう。
 メインになるかどうかはわからないが。

 しかしそのためには数学の知識が必要になる。
 自慢じゃないが俺は高校2年生の時に「代数・幾何」と「基礎解析」にフラれて以来、数学とは絶縁状態である。
 町で会っても、お互い避け合っている。
 噂によると、数学はどうも俺のことが好きだったらしい。
 でも俺、軽く遊びでつき合えるような、器用なタイプじゃないから。