手製皮水餃子づくり

 昼過ぎ。今まで書いた台本とにらめっこをしていたら、突然餃子を作りたくなった。
 考えてみたら、1月にタイトルを決定して以来、一度も餃子を作っていないのだ。
 これは怠慢である。
 すぐに台所に走った。

 冷蔵庫の中をチェックすると、次の材料が見つかった。

 ・合い挽き挽肉300グラム
 ・キャベツ
 ・ネギ
 ・生姜
 ・にら
 ・小麦粉
 ・餃子の皮2パック

 とりあえず、手製の皮で水餃子を作ってみることにする。
 
 その前に、餃子製作プロジェクトの名称を決める。
 コードネーム「昴(すばる)」に決定。

 まず、小麦粉を600グラムほどボールにあける。
 そして、お湯を用意し、少しずつ加えながらこね始める。
 あせらずじっくりとこねる。

 こねていると、今までの小麦粉人生が走馬燈のようによみがえりやがった。
 手打ちうどんを作ろうとして、すいとんになってしまったという苦い思い出。
 ドーナツを作ろうとして、かりんとうになってしまったという苦い思い出。
 こねながら、去来する思い出の一つ一つを振り払っていく。
 失敗するわけにはいかないのだ。
 芝居の出来不出来に関わってくるのだから。

 耳たぶほどの固さになるまでこねるといいらしいので、自分の耳たぶをつまみながら確認する。
 しかし、俺の耳たぶは人より大きい。
 そして美しい。
 じゃなかった。柔らかい。
 だから、生地の固さは俺の耳たぶよりも、少し固めにしておく。

 10分後、こねこねタイム終了。
 生地にラップをして寝かしつける。
 その間、「昴プロジェクトチームB班」は、餡の製作に取りかかる。

 挽肉とゆでたキャベツ、ネギ、ニラ、生姜を混ぜ合わせ、ごま油を加える。
 そして、塩とこしょうで味付けし、味の素を加え、更に混ぜ合わせる。
 最後にしょう油と、つなぎの卵を加える。

 「昴プロジェクトチームA班」は、30分ほど寝かせた生地で、いよいよ皮の製作に取りかかる。
 まずは、まな板に打ち粉をする。
 そして、出来上がった皮を並べる大皿にも打ち粉をする。
 台所が粉まみれになってしまったが、プロジェクトを優先。

 まな板の上で、生地を直径2センチくらいになるまで長くのばし、それを包丁で1センチくらいの厚さに切っていく。
 切って、切って、切っていく。
 佐川君のことがふと頭をよぎる。
 それでも切って、切って、切っていく。

 でかいコイン状になったそれらを、今度は麺棒でうにゅうにゅのばす。
 皮は市販の皮5枚分くらいの厚さにする。

 出来た皮をどんどん大皿に並べていくうちに、面積が異常にでかいことに気がついた。
 でかくて、厚い。
 枚数も多い。
 これではジャンボ水餃子になってしまう。
 しかしもう引き返すことは出来ない。
 やるべきことはただ一つ。
 コードネームの変更だ。

 「業務連絡、業務連絡、プロジェクト名変更、「昴(すばる)」から、「大昴(おおすばる)」へ」

 皮の作成が終わり、具を詰める作業に取りかかる。
 「大昴プロジェクト」の中で、最も華のある作業である。

 懸念していた通り、出来上がっていく餃子はどれもこれもジャンボを通り越した「アンドレ餃子」であった。
 中には小さめの皮もあり、それで包んだ餃子は「ハンセン餃子」くらいにはなるのだが、皮の厚さは市販のものとは比べものにならない。
 やはり全体的に大きすぎたか。
 手製の皮を使い切り、残りの餡を市販の皮で包んでみたら、いきなり「みちのく餃子」になってしまった。

 大皿には、アンドレ、アンドレ、ハンセン、アンドレ、馬場さん、ジャンボ、天龍が並び、その隙間にサスケ、デルフィン、海援隊が並んでいる。
 プロレスを知らない人には何だかわからないラインナップだ。

 さて、全日本プロレス新春恒例バトルロイヤルの様相を呈した大皿をカウンターに置き、大鍋で湯を沸かす。
 沸騰してから、アンドレと馬場さんを中心に、鍋の中に放り込む。
 アンドレと馬場さんはお湯の中で、ウルティモ・ドラゴンばりにぐるぐる回る。とてもヘビー級の試合とは思えなかった。

 やがて、大ハッスルの後で疲れ切ったアンドレと馬場さんが、ぷかりぷかりと浮かび上がってきた。
 深めの皿にすくい取り、「大昴プロジェクト」は無事終了。

 タレは酢醤油を用意した。
 あつあつをタレに浸して、食ってみる。
 皮がぽってりとしていて、作った自分でいうのも何だが、なかなかうまかった。
 ただ、皮を必要以上に厚くし過ぎた嫌いもあり、そのあたりは次回のプロジェクトへの反省材料となるだろう。

 夕食に水餃子を7個食ったら、腹がぱんぱんになった。
 なるほど、確かにこれは主食かもしれない。