花見狂い

 昼の12時、松井智美さんからの電話で起きる。
 メールアドレスを聞く。

 5時、荻窪にて、阿佐ヶ谷南南京小僧の決算報告。
 俺個人は大赤字であった。

 その後、加奈ちゃんと二人でアール・コリンに行き、阿部君が出演する芝居「ゴーイングゼロ」を見る。
 大学時代同期の遠山さんに会う。若々しくなっていた。

 阿部君は大人の演技をしていた。
 しかし、俺が阿部君にやって欲しい役は、もっとトラブルまみれで、運の良さのかけらもない、トホホ人生まっしぐらキャラクターである。

 芝居後、加奈ちゃん、米倉、竹内君、みつ夫と井の頭公園に向かう。
 花見である。
 松井基のぶプレゼンツ。

 日が沈み、夜桜としゃれ込む有象無象の中から、松井さん達を見つけるのは骨が折れた。
 先に現場に到着している宇原君と電話のやりとりをしながら、なんとか目的地に到着。
 20人くらいの面子がそろっていた。
 しかし、暗くて誰が誰やらわからなかった。
 俺の命を狙う奴が紛れ込んでいるかもしれないので、慎重に花見に参加する。

 時計少年の大谷さんと四方山話をする。
 彼女はヘルパーの資格を持っているとか。
 そこへ望月が、ひときわ大きな声で喋りながらやってきた。
 「どうも! 中野の望月です!」
 発音的にはこうだ。
 「どぅもぉ! なっかのっのもっちづっきでぇす!」
 どうやら既に出来上がっているらしかった。

 家城君と岡田さんの、音速かたつむりコンビも来ていた。
 何しろ暗いので、接近しないと相手が確認できない。
 まるで会員制の仮面秘密クラブに潜入したみたいだ。
 9月の音速かたつむり公演に、望月が出演するので、お互いよろしくお願いしますと挨拶する。
 演出は川口さんだ。

 横岳と山口めぐみちゃんも来ていた。
 めぐみちゃんが、
 「塚本さん、おいなり、おいなり」
 と、手製のおいなりをくれた。
 うまいうまいと言いながら食う。
 逆サイドからつるまみちゃんが、
 「ドカさん、例のやつ、例のやつ」
 と、俺の好きな、ふきと山菜の煮物をくれた。
 うまいうまいと言いながら食う。

 複数の、
 不特定多数の、
 女の子達が、
 料理を作り、
 持ってきて、
 それを、
 食べて食べてと、
 すすめてくることの、
 心地よさってば、
 椎名誠風に言えば、
 「人生のシアワセ」である。

 宇原君は髪を短く切っていた。
 「ユーリ・アルバチャコフみたいだよ」
 そう言うと彼は、
 「ボクサー顔ですから」
 と言った。
 横で、彼女のあやちゃんが、
 「マグネシウムの日記、いつも見てます」
 と、エールを送ってくれた。
 面はゆかったが、いつも日記をアップしながら、これを読んでいる人はどういう反応をするのだろうかと不安に思っていたので、とても嬉しかった。

 アンテナ小僧にいつも出ていた、菅野さんと初めて話す。
 「あたし、福島出身なんです」
 そして福島弁でプロフィールを滔々とまくし立てた。
 宇原君が、
 「管野は、本気で彼氏募集中なんですよ」
 と、チクった。
 「簡単だよそんなの。彼氏をアサリと定義してみれば、今日は潮干狩りみたいなもんだから、公園を一周してくれば、彼氏が網にいっぱい採れるよ」
 横であやちゃんがけらけら笑っていた。
 その後、あやちゃんは酔っ払って、
 「初体験はいつもドキドキでーす!」
 と、笑顔で叫んでいた。
 宇原君はそんなあやちゃんにお仕置きをしていた。

 久しぶりに丸ちゃんと話す。
 「どうだい最近。元気かい?」
 「元気です。あの、僕、実は」
 「なんだい?」
 「花見するの、生まれて初めてなんですよ」
 「へえー」
 「26年間生きてきて、今日が、初めてなんです」
 「そうか。じゃあ、いいかい丸ちゃん」
 「はい」
 「これが花見だよ」
 「これが花見なんですね」
 「それにしても久しぶりだよね丸ちゃん」
 「ところがそうでもないんです」
 「なぜ?」
 「ホームページ、よく見てますから」
 「ありがとう」
 「でも、最近会ってないから、僕の名前が日記に出てこなくてとても寂しいです」
 「じゃあ、今日の日記で沢山載せるよ」
 今、約束を果たそう。
 丸ちゃん丸ちゃん丸ちゃん丸ちゃん。

 わっちゃんとは、例によってプロレスの話をした。
 彼は筋金入りの新日信者である。
 俺はどちらかというと、全日、ノア、U系信者なので、話す時は、特定の団体についてではなく、プロレスそのものについてであることが多い。
 今日は、先日桜庭が敗北したPRIDEの話。
 武藤の解説が良かったということで意見の一致を見る。
 プロレスラーを賛美し合う時のプロレスファンは、愛と平和を伝えるメッセンジャーになれるのだ。

 横岳から、CD?ROMを返してもらう。
 わざわざケースに入れてきてくれたが、裸が大好きなので裸のままもらう。

 10時にお開き。
 松井さんは、川口さんと散歩をしていて、結局殆ど話せなかった。
 片づけが終わった頃、つるまみがやって来た。

 「あのね、ドカさん。あたし、今度入籍するの」
 「へえー! そうなんだ」
 「書類書くだけだけどね」
 「おめでとう」
 「今日って、何日だっけ?」
 「4月1日だよ」
 やられた。

 飲み足りない連中は、居酒屋に移り、飲み直す。
 俺の他に、松井さん、横岳、望月、めぐみちゃん、米倉、○×カンパニーのケンケン、つるまみ、川口さん。
 それまで寒さに震えながら飲んでいたので、暖かい店の中にはいると、すぐに頭がどろんとしてきた。
 川口さんは寒がりらしく、何枚も重ね着をしていた。

 横岳と話す。
 役者としての横岳について話しながら、頭の回転がどんどん鈍くなっていくのを感じた。
 暖かい部屋のせいで、酔いが急に回ってしまったらしい。
 望月は相変わらずテンションが高かった。

 横岳は言う。
 「4年前なら、町で望月さんを見かけても、物陰に隠れましたよ」
 米倉がにやにや笑ってうなずく。彼女と横岳は、同期生なのだ。
 「それは、おっかなかったから?」
 「はい」
 「それで、今は?」
 「やっと平気に突っ込み出来るようになりました。望月さんも丸くなりましたよ」

 終電の時間が近づき、一人二人と帰っていった。
 俺と、つるまみ、ケンケンの3人が残った。
 ケンケンは、「俺、本当はあんまり芝居が好きというわけじゃないんです」と言っていた。
 映像に興味があるらしい。
 「ドカさんは興味ないですか?」
 「そりゃ、あるよ。でも、まったくやったことないから」
 
 店で2時まで話をし、オギノ式わっちゃん丸ちゃん共同マンションに泊めてもらうことにする。

 吉祥寺からマンションまで、歩いて30分くらいかかった。
 歩きながらつるまみは、少しまじめな顔になり、「やっぱりねえ、芝居を続けていくと、段々焦ってくるよねえ」と言っていた。

 マンションに着くと、わっちゃんが電気釜を開け、ご飯をほぐしていた。
 つるまみは、わっちゃんに、コントの台本を渡していた。
 昔、やったことのあるコントらしい。
 俺も見せてもらう。
 大人になったカツオとイクラの話が、べたべたながら面白かった。
 
 時計を見ると4時だった。
 そこで記憶が突然途切れる。