ソビエト社会主義共和国連邦への帰国

 決意の朝。
 7時半に飯を食ってから、マラソンをした。
 通学の小学生中学生高校生がうじゃうじゃいた。
 そいつらを目で殺しつつ、15分走る。

 いつもは30分ほど走っているのだが、先月、朝マラソンで1日中ぐったりしていた経験を生かして、半分にしたのだ。
 うちに戻ってシャワーを浴び、着替えてコーヒーを飲む。
 そして、仕事に出かける。

 確かに気分が良かった。
 電車の中でも眠くならなかったし、階段2段飛び一気も、楽々こなせた。

 さて、昼である。
 仕事先の六本木は、ほどほどにうまいラーメン屋が多いのだ。
 お気に入りは「醍醐」である。
 18時間煮込んだスープは、どろっとしているのにしつこくない。
 麺はコシが強く、縮れ麺がスープとよくからむ。
 しかも、ライスがついてくる。
 麺を食べ終わり、残ったスープにライスを投入し、雑炊みたいにして食うのがこの店の特徴である。
 確か、「天下一品」でも、似たようなことが出来たはずだ。

 ただ、汁かけご飯というのはどうしても貧乏くさくて恥ずかしい。
 店の中を見渡すと、大半の客がライスをそのまま食べていた。
 しかし今日の俺はひと味違う。何しろ、朝のマラソンをこなしてきた男なのだ。
 威勢良くライスをスープの中に投入し、レンゲで食い殺す。
 確かにうまい。
 ここのスープでなければ出来ない。

 腹一杯になり、店を出る。
 昨日、望月とラーメンの話をした時に、彼はこう言っていた。
 「例えば、学生専用で300円のラーメンとか、500円で替え玉2杯分込みのラーメンとか、そういうのが結構好きなんですよ」
 「そうだよね。そうだよね。そいつはまさに、そうだよね」
 俺は激しく同意した。
 望月は続けた。
 「なんか、うまいラーメンがどうこうってよりも、それがラーメンであるならいいやって気に、最近なってきたんですよ」

 確かにその通りかもしれない。

 仕事が終わったのが6時半。
 本屋など回り、7時半帰宅。

 「化かされた古狐亭の憂鬱」読み始める。
 リチャード・ジュリー警部シリーズの2作目。
 典型的なミステリー。
 クーンツが長かったので、かえって落ち着く。

 クーンツ作品の「超訳」が出ていたのを、夕方発見した。
 どうもあのシリーズは、好きになれん。
 確かに読みやすいが、残らないのだ。

 翻訳家によって作品の印象ががらりと変わることは当然ある。
 カート・ヴォネガットは、浅倉久志さんが翻訳することが多く、おかげでファンとしてはおなじみのフレーズを楽しみにすることが出来るのだ。
 「そういうものだ」とか、「その他いろいろ」とか。
 しかし、「母なる夜」という作品では、確か伊藤典夫さんが翻訳されていたと思う。
 面白かったのだが、別の作家の作品みたいに感じ、戸惑ったのを覚えている。

 そういえば、最近、映画や音楽で、タイトルの日本語訳をあまり目にしなくなった。
 結構重要なことだと思うのだが。

 昔、とある出版社から出版されたビートルズ詩集は、すごかった。
 [Back in the USSR]
 というタイトルの横に、
 「ソビエト社会主義共和国連邦への帰国」
 と訳されてあった。