書けず錯乱する夜もある

 今日は強気に、弱音で攻める。

 どうしよう、台本書けない。
 最初の1ページが書けない。
 最初の1ページさえ書いてしまえば、あとはすらすらと書けるのに。
 こんなに書けないのは久しぶりだ。

 しかも、本番まであと2ヶ月しかないじゃないか。
 焦る。
 脂汗が出る。

 と、焦ったところで書けないもんは仕方がない。
 無理してカリカリ書いたって、ろくなものは出来ない。
 古いネタ帳をめくると、大抵ろくなものは残ってない。
 ネタ帳に対して、無理をしているからだ。

 世の中、思うようにはいかない。
 こんな時、三代目魚武濱田成夫の詩集は、読まない方がいい。
 落ち込む。

 かといって、つげ義春の漫画も、やめておいた方がいい。
 別な意味で落ち込む。

 こういう時、なにを読めばいいのか。
 いや、むしろ、なにも読まない方がいいのか。

 大学時代の恩師は、気分が沈んだ時、ニーチェを読むと言っていた。
 「気分が高揚するわよ。塚本さんもいかが?」
 「いかが?」と言われた22歳。

 筒井康隆「狂気の沙汰も金次第」
 井上ひさし「巷談辞典」
 つかこうへい「つかへい犯科帳」
 景山民夫「食わせろ!!」

 本棚を漁り、以上4冊を引っぱり出した。
 共通点は、すべて夕刊フジに連載されたエッセイである。
 イラストは山藤章二。

 このシリーズに名を連ねた作家はすごい。
 梶山季之、山口瞳、吉行淳之介、五木寛之、渡辺淳一、藤本義一、青木雨彦、中島梓、村松友見。(「み」という漢字が打てません。「示」と「見」が合わさったやつ。わかりますね)
 みなさま、たいそう苦しんでいらっしゃる。

 俺が持っているのは、上に上げた4冊だけなのだが、確かに日によって出来不出来がある。
 駄目な時は駄目なのだ。
 それでも、穴をあけるわけには行かないから、諸先生方はそれぞれ作風に見合ったしのぎ方をしておられた。

 4冊の中では、景山民夫の「食わせろ!!」が、一番面白い。
 当時まだ放送作家と小説家の中間地点にいた時だから、書きとばすのに慣れていたのだろう。
 しかし、90年代に入ってからの景山さんは、ほんとに精彩を欠いていたな。
 80年代後半は、あれだけ多作で、どれも力作だったのに。
 晩年は、文庫本を乱発していて、痛ましかった。

 望めぐから電話。
 連休中に宮沢賢治のふるさとへ行って来たという。
 土産の日本酒を今度くれるそうな。楽しみ。

 夜、三代川に電話。
 卒公以来話してなかったが、自宅にいるところを抜き打ち電話で取り押さえた。
 卒業以来、バイトをしながらぶらぶらしているという。

 「本読んだり、映画見たりした方がいいよ。将来の貯金になるから。やっぱり何かを作るためには貯金期間が必要だからさ」
 「あ、ぼく今、プラモデル作ってます」
 「ばか。そういう意味じゃないよ」
 「シャアが好きなんで、リックディアスを作ってます」
 本物を作れ、本物。
 いろいろ話し、困ったことがあったらいつでも電話しろと、先輩風を吹かせてみたら、
 「ぼく、人に電話しないんですよ」
 と、すかされた。

 夜、このまま唸っていても仕方がないので、台本を途中から書き始めた。
 2場くらいの位置になるだろう。
 見る前に跳べ。
 跳んでイスタンブール。