恥ずかしいこと

 荻窪にて稽古。
 家城君と智保さんの二人来る。
 3人で何ができるのか考えた結果、家城君の人間性を解剖することにする。

 「人ってさ」
 「はあ」
 「もっともプライベートな空間にいるとき、リラックスするだろ」
 「ですね」
 「そして、往々にして、ものすごく恥ずかしいことを、してしまうだろ」
 「一人で、ですか」
 「いや、この場合、二人いるほうがいいのだけど」
 「たとえば彼女なんかといる時ですか?」
 「だな」
 「わかりますよ。ありますあります」
 「単刀直入に聞くが、君はどんな恥ずかしいことを?」
 「え? 言うんですか?」
 「もちろんだよ君」
 「ドカさんが先に言って下さいよ」
 「何で俺が言わなきゃいけないの?」

 横から智保さん。
 「聞く以上は自分から言わなきゃ駄目だよね」

 俺の恥ずかしいこと…
 それは、あまりにも恥ずかしいゆえに、日記にすら書けない。

 「さ、お願いします」
 と、家城君がうながす。
 ここで躊躇しては、沽券にかかわると思い、気合を込めて語ろうとしたら、ドアが開いて、舞台美術のヨネクラさんが入ってきた。
 「駄目だ! 言えない!」
 「どうしてですか!」
 「ギャラリー増えたもの!」
 「意気地なし!」

 ヨネクラはいぶかしげに俺を見るが、彼女はマグネシウムの芝居に二回出演した経験があり、こうした稽古風景自体は珍しくなさそうだった。
 家城君は挑戦的な斜め目線で俺を見ている。
 智保さんはため息混じりで台本などめくっている。
 よし、俺も男だ、腹ぁ決めた。

 「実は、二十歳の時な」

 そして1分が過ぎた。

 「俺を見るな! 見ないでお願い!」
 喩えようもない羞恥心に包まれ、俺は叫んでいた。

 落ち着いてから。
 「さ、今度は君の番だ」
 「僕っすか?」
 「言え。絶対言え」

 家城君は割とさらりと言ってのけた。
 聞いてて恥ずかしくなり、思わず悲鳴をあげてしまった。
 試合に負けて、勝負に負けた。
 悔しい夜だ。

 稽古後、ロイヤルホストで舞台美術の話。
 ヨネクラさん、なんと、HTMLの辞典を持ち歩いていた。
 「今、ホームページ作ろうと思って、勉強してるんです」
 思わずうなった。

 帰宅後、「松本紳介」見る。
 始まった頃と比べて、二人のやり取りがこなれてきて、面白かった。
 ボケと突っ込みが曖昧で、そのことが逆に、会話の品性を高めていた。