山田詠美

 稽古が忙しくなってくると、読んだ本の感想などを書かずに終わってしまい、そのうち、その本を読んだことさえも忘れてしまうなんてことがある。
 だから、稽古が休みである今日のような日に、覚書をしたためることで、記憶の風化に抵抗するわけだ。

 先々週に、クーンツの「コールドファイア」を読み終わった。
 3週間くらいかかったのだが、あまり感銘は受けなかった。
 面白くなかったわけじゃないのだが、5月はどうも、自分の中にエンターテイメントを拒否する何かがあったようだ。
 ゆとりがある時にもう一度読み直したら、意外とはまるかもしれない。

 先週、山田詠美の「ひざまずいて足をお舐め」を読み終わった。
 山田詠美さんの本は、今まで一度も読んだことがなかったのだ。
 90年代も終わり、新世紀に入った今読むと、物語の設定や文体や哲学を、きわめて素直に受け入れることができることに気が付く。
 世の中がそれだけ変わったということだろう。

 この前ビデオで「コミック雑誌なんかいらない」を見たのだが、おニャン子クラブが「セーラー服を脱がさないで」を歌うシーンがあり、その、あまりの素人加減に、全身が脱力してしまった。
 あれを見ると、モーニング娘はすごいんだな、と思う。

 おニャン子クラブに象徴される80年代カマトト文化は、山田詠美の存在を、当然のようにキワモノ扱いしていた。
 しかし、椎名林檎が当たり前のように売れる現在、山田詠美さんの小説はむしろ、きわめて純度の高い文学になりうるのだろう。