38度の熱

 熱が38度出たので、仕事を休んで寝ていた。
 昼過ぎには起きて、ラストシーンを書ければいいと思っていたのだが、だらだらと夕方の4時まで眠ってしまった。

 風邪をひいた時にはとにかく体力をつけるのが一番だという信仰心から、雑炊を作り、野菜ジュースを飲み、パンとソーセージを食べた。
 食えるだけ食い、稽古場へ向かう。

 高円寺純情商店街を北に抜け、早稲田通りに差し掛かったところで智保ちゃんと会う。
 本番前には必ず体調を崩すのだが、今回は大丈夫そうだと彼女。
 俺も、なぜか夏に風邪をひく。
 去年、「夏の子プロ」をやった時も、めまいがするほど熱が出て往生した。

 山ちゃんと智美君のシーンを稽古する。
 きめ細かく稽古をし、隙をなくすのが目的。
 山ちゃんの地声が、意外と良いことに気が付く。

 ラスト手前のシーンを飯野抜きで稽古する。
 なぜだかわからないけど、戦うように餃子を作る。
 そのためには、熱、熱、熱である。
 役者と、二間ばかりのスペースがあれば、芝居をしてみせると言っていたのは、蜷川さんだったっけ?

 かつて、色々な演劇論を齧ったことがあった。
 いわゆる向上心からである。
 それが、今の自分の血肉となっているかというと、必ずしもそうではない。
 むしろ最近は、論理的な駄目出しが、不思議なほど苦手になっている。
 もちろん、やろうと思えば出来るのだが、駄目出しをしながら、「こんな駄目出しをして良くなるなんてありえないよな。それは、ファンタジーだよな」と思ってしまうので、精神衛生上非常に良くない。
 役者にとって、駄目なところを短い言葉で的確に言ってもらうことは、役作りをする上で非常に助かるのであろうが、結局のところそれは、対処療法に過ぎないような気がする。
 風邪をひいたから治すというのは、その場しのぎに過ぎないわけで、大切なのは、風邪をひかない体を作ることだろう。
 もちろん、一朝一夕にはいくまいが。