アラブ人への風当たり

 アメリカ国内のアラブ人に対する迫害が頻発しているらしい。
 案の定ではあるが、同時に、「スケープゴートを出してはいけない」という冷静な声もあるらしい。
 大統領曰く、「今回の敵は今までとは違う。テロリストはもちろん、それを匿う勢力も摘発するつもりだ」

 街を歩いて、人と人が何かを話しているのを聞くと、大抵がアメリカのテロ事件のことだ。

 もう、何もかもがしゃれにならん。

 夕方、稽古場についても、その話題だ。
 東さんは弁当を食いながら、ビル倒壊のショックを語っていた。

 風呂泥棒たちのシーンを稽古する。
 いない人の部分は除くが、結構きちんと稽古が出来た。
 伊原さんの指示で、全員コートやらジャンパーやらを着込んでの稽古だったので、実際の運動量よりも汗が出た。
 東さんなどは、袖で控える度に、汗まみれの顔にとろんとした目で、「暑い」とつぶやいていた。当たり前だ。

 稽古後、小雨の降る中を西新宿駅に向かって歩きながら、思わず新宿の副都心超高層ビル街を見上げた。
 もしも、三井ビルあたりにジェット機がぶつかったらどうなるのだろう。
 なんてことを考えた。
 きっとそういう人は新宿に何万人もいただろうが。