牛の話

 「桟橋で読書する女」読了。
 夏に読み始め、中断していたのを、火曜日から読み直した。
 暑い季節は活字が頭に入ってこないことが多かったのだが、今くらいの気温になるとサクサク読める。
 読書の秋とはよく言ったものだ。

 夕方、西新宿から西永福までマラソン。
 一昨日は1時間15分もかかってしまったので、今日はタイムを少し縮めるべく、ペースをあげてみた。
 結果、1時間5分。

 稽古中、演出をつけていた東さんが、何気なく牛の話を始めた。

 「俺、北海道の牧場で働いてたことあるんだけど、牛って、諦めると死んじゃうんだよね。ゴロンと横に寝ちゃうの。横に寝ると体にガスがたまって死んじゃうんだよ。でも、自分じゃ絶対起きないわけ。それでどうするかっていうと、めちゃくちゃぶん殴るんだわ。シャベルとかで。おいおいいいのかよってくらい殴るんだけど、そうやってでも起こさないと死んじゃうから」

 やがて、病気になって立つことが出来なくなった牛の話に及び、

 「牛って、元気な奴は30万以上で売れるんだけど、病気になった牛って5000円くらいなんだよね。死んだ牛ならチョコレート1枚だよ。その牛は狂牛病の牛みたいに、立つのがやっとって感じでさ、安楽死させてやろうって牧場主の人に言ってたんだ。ところが抗生物質を獣医さんに注射されたら、突然原っぱを駆け回ってんの」

 皆、少し笑うが、

 「走り回って突然、ぱたっと倒れたんだ。見に行ったら、あ、死んでるって」

 皆、沈黙し、

 「牛って、死ぬと目がエメラルド色になるんだよ。これが、この世のものとは思えないくらいきれいなわけ。それから、すーっとグレーに変わっていくんだけどね」

 皆、ふーんといった表情。

 「ごめん、稽古続けるよ」

 かくして余談は終わったのだが、非常に面白い話だった。