茅場町のうまいラーメン

 これはもう習性と言ってもいいのだが、仕事場が変わったり、芝居の稽古で通ったりで、馴染みの街が出来たりすると、うまいラーメン屋を探してしまう。
 現在、日本橋茅場町で働いているのだが、色々まわった結果、中国人が経営している中華料理屋(名前を忘れてしまった)が、一番うまいとわかった。
 いや、うまいどころか、雑誌に載るべき味である。
 今のところ、客といったらビジネス街のサラリーマンばかりで、ラーメンマニアに見つかってはいない様子だ。

 桟敷の稽古場に向かう途中にもラーメン屋がある。
 青梅街道に面しており、人通りは沢山あるのだが、なぜかいつも閑古鳥が鳴いている。
 原因ははっきりしている。
 まずいからだ。

 どうもここ数年、人々のラーメン舌は肥える傾向にあるようだ。
 「ラーメンならなんでもいい」という人が少なくなり、まずい店は淘汰されていった。
 しかし、昔ながらの透明醤油の東京ラーメンが少なくなった。
 あっさりしていて地味だからだろう。

 ラーメンのことを考えながら稽古場に着く。
 稽古も佳境に入ったため、先週からマラソンは控えているものの、食い物のことを考えているとやはり腹が減る。

 ラスト近くの風呂泥棒シーンを細かく稽古する。
 「ドカ君はさ、動く時に、大江戸動きになるんだよ」
 東さんがそう言って笑った。
 要するに、動きの「字余り」のことだ。
 感情の補填と、動きの未整理と、興奮状態を維持するためにそうなることがよくあるのだ。
 こういう癖は、言われないと絶対に気がつかないから、あり難い。