まだ読んでなかった「我輩は猫である」

 昨日の夜、読む本がなくなってしまった。
 というわけで、昼休みは会社近くの「華龍飯荘」で昼飯を食い、残りの休憩時間を計算しつつ、行きつけの日本橋新川にある古本屋へ向かったのである。

 正直言って、急にやってきた縁談のように、「そう言われてもなあ」的な優柔不断の塊が、身体の中に滞っており、本を選ぶこと自体が苦痛で仕方がなかった。
 なぜだか、それは、わからない。

 でも、本が鞄に入っていないと落ち着かないと言う、因果な性癖ゆえに、無理してでも本を選ぼうと悲壮な決意をしたその瞬間、1冊100円コーナーで目に入った本があった。
 なんとまあそれは、夏目漱石の「我輩は猫である」であった。

 高校時代に「こころ」を読み、「三四郎」「それから」「門」「夢十夜」を読み、大学に入ってから「坊っちゃん」「彼岸過迄」「倫敦塔」を読んだ。
 なぜか、「我輩は猫である」は、読む機会がなかった。

 ページをめくってみて、読む機会がなかったことに感謝した。
 二十歳そこそこの自分が、面白さを味わえたかどうか。

 夕方、TJPスタジオ入り。
 照明のシュートをやっていた。

 8時から切り通しをするが、途中で予定変更となり、舞台をオペさんに渡すこととなった。
 10時45分まで、稽古場の整理を手伝う。
 今週は仕事の関係で、仕込み作業に携わることが出来なかった弱みもあり、地味なことでも(たとえば重いものを運ぶとか)手伝うようにしている。

 伊原さんはずっと劇場に顔を出している。
 顔を合わせる度に「ドカ君、元気?」と聞いてくるので、「元気です」と、まるで吉田拓郎のように答えている。
 今日で三日連続である。