ジョージ・ハリソン死す

 「赤い橋の下のぬるい水」読了。
 中編が3本収録されていたが、表題作が一番面白かった。
 イメージ展開の仕方が、南米文学のようで新鮮だった。
 読み手に心の準備を与えず、イメージの連鎖をどんどん進めてしまうやり方。
 いつの間にか作者の手の内にのってしまっている。

 昼休みに中央区新川の古本屋で、ル・グインの「ゲド戦記?影との戦い」を買う。
 岩波同時代ライブラリー。
 6年前に一度読んだことがあるのだが、続編が一向に刊行されなかったため、いつの間にか忘れていたという作品。
 もともと児童文学であり、子供向きの装丁で全3巻刊行済みなのだが、大きな本屋に行かなければ見つけることはできず、しかも1冊が高いので、同時代ライブラリーに収録されるのをひそかに待っていたというわけ。
 が、その気配はなし。
 「ハリー・ポッター」が驚異的に売れている昨今、この作品も受け入れられるに違いないのだが。

 帰宅後、ショックなニュースを聞く。
 ビートルズのジョージ・ハリソンが、闘病むなしくガンで亡くなったのだ。
 享年58歳。
 早すぎる死だと思う。

 世間的にビートルズのメンバーで最も目立たない存在はジョージ・ハリソンだったと言える。
 10年前の暮れにコンサートのため来日したときも、ニュースでちょこっと取り上げられただけだった。
 今思えば、ワールドツアーの途中で立ち寄るというわけでもなく、なぜ日本だけでライブが行われたのか不明である。
 ライブの評判だが、共演したエリック・クラプトンにすっかりお株を奪われたという評価が多かったが、広島でのステージはかなりリラックスしたいいものだったそうな。

 ジョン・レノンとポール・マッカートニーは言うまでもなく、20世紀のロック、ポピュラーソングのジャンルにおいて、世界最高の作曲家であったわけだが、ジョージの悲劇は、その二人にはさまれながらも、作曲の才能があったことだと思う。

 ジョージの曲は、いわゆる売れ線のメロディーを微妙にはずしてくるところに特徴があり、それが極端になると曲の構成がわからなくなってしまう。
 かといって、売れ線の曲が書けないというわけでもなく、ただ、そういうメロディーを作ってしまう自分を嫌悪するみたいな、ある種の矜持があったのではないかと思う。

 当然、12月は毎日のようにジョージのアルバムを聴く事になるだろうと思うが、買うにせよ借りるにせよ、ジョージの作品には廃盤が多く、集めるのに苦労しそうだ。
 今一番聴きたいのは、ソロ作品ではなく、ジョージが88年に結成したトラベリングウィルベリーズという架空バンド。
 メンバーが、ジョージ・ハリソン、トム・ペティ、ジェフ・リン、ロイ・オービソン(「プリティ・ウーマン」の人)、そしてボブ・ディラン。
 結成当初、当然ながら大いに話題になり、ツアーをやるという噂もあったらしいのだが、アルバム発売直後にロイ・オービソンが急死。
 もったいないことだが、ジョージの運命はそういうことが多かったように思う。
 今は、ただただ、安らかに眠って欲しいと願うのみである。