桜が散る頃になるとスギ花粉の飛散量も少なくなってくる。
今年はそれが例年より早いというわけだろうか。
もう目のかゆみを覚えなくなってきた。
めでたいことだ。
夕方、沼袋にて稽古。
中野からバスに乗って20分ほどかかる。
しかし中山君に言わせると、自転車で5分ほどの極めて身近な稽古場とのことだ。
望月と中山君に役を割り振って、キャラクター作りの実践をする。
実践というよりも、衣装を着替えるように人物の性格をコロコロ変えていく稽古だ。
おどおどした人だったら?
押しの強いタイプだったら?
いつも機嫌が悪い人だったら?
笑い上戸だったら?
思い浮かぶ様々な「もしも」を形にしていく作業は、稽古初期における楽しみの一つだ。
役者は大変だろうが。
ただこの方法も向き不向きがあって、アクが強い役者だとあまり意味がなかったりする。
そういう時はアクが強い役者の「自分自身」で役を演じてもらう。
1時間稽古しては5分休むという感じで9時半まで稽古をした。
商店街を通って沼袋駅まで歩く。
「この辺はいかにも西武線沿線の商店街って感じだね」
中山君が答えた。
「そうですね。僕結構好きですよ」
「俺は苦手なんだよ」
「どうしてです?」
「都立家政駅の商店街もこんな感じなんだけど、あそこにある黒テントの作業場でドラマスタジオ生は最初の公演をうつんだ。そして木野さんにこってり絞られるわけ。だから思い出すんだよその時のことを」
横を歩いていた健ちゃんが頭を抱えて「やめてくれ」と言った。