ロシアに勝つ

 7月公演「光陰」は、今までのマグネシウムリボン公演と比べると毛色の違ったものになりそうだ。

 その1 犯罪を扱う。
 その2 人の原罪を考える。
 その3 犠牲と報いについて考える。

 なんだか巨匠小林正樹監督の「人間の条件」ばりに堅いテーマを扱っているみたいだ。
 だがだがしかし。
 その堅いものをどうにかして柔らかくする作業に、最近ずっと苦労しているのだ。

 問題なのはおれ自身が「本当に」柔らかくなっていないと、堅いテーマを柔らかく語れないということだ。
 少しでも無理があったら、何もかもが消えてしまうはず。

 というわけで台本を書くのがとても苦痛だ。
 書いていると「原罪」とか「報い」とか「宿命」「運命」「呪い」など、どうにもならない系のネガティブなエピソードが、現実世界に生きる俺を苦しめるのだ。
 砕けた言い方をすればずばり、「へこむ」

 へこむだけならいい。
 夜中に書いていると恐怖のあまりテレビをつけっぱなしにしてしまうことさえある。
 怖いのだ。
 怪談と同じ方向性で。

 かといってホラーな芝居を書いているわけではないのだ。
 無意識にあるものを意識化に引っ張り出す作業をすると、凝縮された怖さの要因がポロポロ出てくることがある。
 それと同じだ。

 てなわけで昼も夜も恐怖と戦いながらの台本書き。

 夕ご飯には野菜たっぷりスープを作った。
 せめて食事くらい健康的にしなくては。

 さて、それはそれとして、これはこれとするべきワールドカップである。
 日本対ロシア戦をテレビで見た。
 音声はもちろん消して。

 ベルギー戦の時よりもディフェンスが厚くなっているようだと素人考えをかましてみる。
 にしても、フランス大会やそれ以前の時に感じた「もうやめて!」と言いたくなるような不安定さをほとんど感じなかった。
 後半、永遠の「バイト君顔」稲本がゴールを決めた。
 それもなんだか当たり前のよう決めてくれたので、感動というよりは当惑してしまった。
 思わずテレビに向かって
 「やったじゃんバイト君」
 と声援を送ってしまった。

 後半残り10分を切ったあたりからロシアの攻めが雑になってきたように見えた。
 日本代表チームの負け試合の記憶がフラッシュバック。
 「絶対祈らないように。祈ったら負ける。何気なく何気なく」
 呪文のように唱えつつ、ロスタイムを見守る。

 そして勝った。

 思考停止。

 サッカーで思考停止したのはドーハの悲劇以来だ。

 そのまま鳥肌立ちっぱなしで日付変更。