前田日明待望の空気

 紳介本に触発されたわけではないが、先日図書館で借りたのは金融・経済の本が多かった。
 その中でわりと生活密着型の感じがする本を読む。
 タイトルはズバリ「お金の賢い生かし方」

 そういえば自分は随分長いこと、お金について考えていなかった。
 考えていないからこそ、大学を出て演劇を続けるなんてことが出来たと最近まで思っていた。
 だが、それはただの逃げだろう。
 勉強することからの逃げでもあり、考えることからの逃げでもある。

 自分の場合は20代の前半からパチンコ屋通いをしていたことが、金銭感覚を狂わせていた。
 逆に言えば、まともな金銭感覚を持っていては、パチンコなんかできやしないのだ。
 大学の頃、友人と3人でパチンコ屋に入ったことがある。
 一人の友人はパチンコをするのが初めてだった。
 <パチンコ大賞>という平台を打った。
 1000円分の玉が飲み込まれそうになり、彼は真っ青な顔をしていた。
 しかし土壇場で当たりを引き、彼の収支はプラスマイナスゼロになった。
 「おれ、向いてねえわ」
 と彼は言った。

 自分はその後9年ほどパチンコをやり続けたのだが、金銭感覚に受けた影響の方が収支そのものより大きい。
 お金がお金でなくなる感覚を一度味わうと、お金というものがよくわからなくなってくる。
 だから今、お金について考えることは、金銭感覚のリハビリなのだ。

 夜、プロレスのビデオを観る。
 鈴木みのるが気になり、パンクラス時代の試合をチェックする。
 ついでに過去の週刊プロレスを読み、現在の鈴木みのるについて色々考える。

 鈴木みのるは船木誠勝とともにパンクラスを旗揚げた、生粋のU系ファイターだった。
 最近では新日本やノアのリングに上がり、高山善広とIWGPタッグ選手権王者の座についている。
 出戻り感が強いのは、鈴木みのるが自分のファイトスタイルにこだわる頑固者だったからだろう。
 高山の場合はUインター時代から安生洋二と共にゴールデンカップスを結成し、インディー団体に上がったり柔軟なファイトを経験しているし、Uインター崩壊後も全日本プロレスで長くファイトを経験した上で現在がある。
 しかもPRIDEのリングにも平行して上がることが、高山の価値を高めている。
 危惧すべきは、プロレスのリング以外に上がる要素が見あたらないことだろう。
 パンクラスのリングにしても、旗揚げルールなどでプロレスラーを相手に戦って勝っても、あまり褒められたものではない。
 ノア、新日本と平行して、総合格闘技のリングに上がった時に初めて、鈴木みのるは再び輝くのではないか。

 パンクラスといえば、リングス前田日明とは最後まで絶縁状態だった。
 94年、週刊プロレスのインタビューで、船木と鈴木が前田に絶縁宣言をしてしまったのが始まりだ。
 その根底にあったのは鈴木の不信感ではないかと思う。
 新生UWF時代からずっと、前田の口から鈴木を褒める言葉が出たことがない。
 船木に対してはずっと気にかけている節があるのにだ。
 97年、パンクラスの高橋が前田にケンカを売った時も、
 「鈴木、お前が出てこんかい!」
 と前田は言っていた。

 新生UWF時代、前田は鈴木と一度対戦している。
 鈴木はドロップキックまで繰り出し前田に挑むが、最後はたしか締め落とされて負けている。
 試合後、リングで鈴木は前田に訴えるが、相手にされず食ってかかっていた。

 結局前田が気になる。
 リングス解散から来年で2年が経つが、プロレスファンの間ではそろそろ前田待望論が聞かれだした。
 なんだかんだいっても、総合格闘技ルールへの見識や、選手のスカウティングにかけての眼力は、船木なき現在他に並ぶ者がいないだろう。
 前田の新団体がもしできれば、PRIDEに先細り感を覚えているファンやマスコミは、諸手をあげて歓迎するのではないか?