チャーリー・ワッツの左フック

 7時半起床。
 炊き込み御飯とキムチを食べる。

 昨日から頭がクラクラする。
 酔った時に似た症状だ。
 暖かくなってきたので頭蓋骨が緩んだのだろうか。
 そういえば春になるとこういうことが多い。
 (糖分が足りないのだろう)
 そう思ってあんぱんを食べたりしたものだ。

 夕方、実家へ。
 父が加齢黄班変性症になったらしい。
 余分な毛細血管が網膜を隠すらしく、レーザー光で焼き切る治療をするそうだ。
 タバコ、高血圧、心臓病などが要因となるらしいが、親父はその全てに当てはまる。
 機械設計の仕事で現場に出る時、細かいチェックを自分で出来ないのはやはり不安らしい。

 『キース・リチャーズ 伝説にならなかった男』読了。
 視点をキースに据えたローリングストーンズ伝だ。
 一時期、『パイレーツ・オブ・カリビアン』の続編にキースが出るという噂があったが、ストーンズのツアーが決定したことでご破算になった。
 本書を読めば、キースがツアーを蹴って映画に出るわけがないということがとてもよくわかる。

 ミック以外のメンバーでは、ブライアン・ジョーンズとロン・ウッドのことがやや多く書かれているくらいで、ビル・ワイマンやチャーリー・ワッツ、ミック・テイラーの記述は少なかった。

 しかし、チャーリー・ワッツの面白いエピソードがひとつあった。
 ミックが初めてのソロアルバムを録音している頃、彼はストーンズを自分のバックバンドみたいに思い始めていて、他のメンバーから愛想をつかされていた。
 そんな時、明け方に酔っ払ってホテルに帰ってきたミックは、熟睡しているチャーリーを見て、
 「オレのドラマー」
 と言って、起こしたそうだ。
 チャーリーは起こされた後、丁寧に髭をそり、サビル・ロウのスーツを着てからミックに歩み寄ると、左フックをお見舞いしてこう言った。
 「俺がお前のドラマーじゃない。お前が俺のシンガーなんだ」
 実にしびれるエピソードだ。