熱笑花沢高校

 明け方近くまで起きていたのに朝の9時半に目が覚めた。
 寝付きが良かったのだろうか。
 体調が良くなりつつあるのかもしれない。
 あるいは、疲労が底値から反発したか。

 部屋が散らかっていた。
 片づけなければと思いながら、どうやって片づけたらいいかわからず、途方に暮れてしまった。
 片づけようのないものが多い。
 収納ということについて、意識改革をしなければならないだろう。

 4時半にうちを出る。
 雑司ヶ谷の稽古場へ。
 話し合い中心の1週間も終わりに近づきつつある。
 翠さんと西野さんの関係、長谷部さんと渡辺さんの関係を、じわじわと考える。

 翠さんが演じるヨシコは、西野さん演じるマサミを姐さんと慕っている。
 その設定をスタート地点にするだけで、たくさんの疑問が生まれる。
 なぜ慕っているのか。どういうところを慕っているのか。いつから慕っているのか。
 慕われていることに気づいているか。慕われているのはどんな気分か。
 スタート地点から枝を張り巡らせるように考えていく。
 正解を見つける作業ではなくて、白紙のノートに新しいプロフィールを書き込む作業だ。

 長谷部さんと渡辺さんの関係も同じようにつきつめている。
 この二人は、刑務所内で知り合ったダチ同士とでもいおうか。
 似たもの同士ではなく、一匹狼と優等生。
 兵隊やくざの勝新太郎と田村高広。男だけどたとえるならそんな感じ。
 片方が先に出所するのだが、それによって関係がどう変わっていくのか。
 こういう関係を芝居のシーンで考えていくのは、個人的に大好きだ。

 いくつかのシーンをつなげて実際にやってみる。
 先週の通しと比べ、人物像に厚みが出てきた。
 台詞のない時の視線が面白い。
 誰が誰に注意しているのかわかる。
 これがさらにどう変化していくか。

 夜10時半、実家に帰る。
 日本シリーズの結果をヤフーで知る。
 ロッテが10対1で大勝。
 シリーズ史上初の濃霧コールドだそうだ。
 9点差がついていたら、文句は言えないだろう。
 またしても阪神は、井川で星を落とした。
 今年の井川はそういう役回りか。

 かなり久しぶりに、どおくまんの『熱笑!花沢高校』を読んだ。
 この漫画は20年以上前に少年チャンピオンに連載されていた。
 花沢高校の1年生である力勝男が、弱虫のいじめられっ子から脱却して、やがて関西の総番長になっていく話。
 はっきりいって、無茶苦茶な漫画である。
 出てくる高校生は、鉄仮面姿だったり、肘や膝に仕込んだナイフを出して高速回転したり、暴れ回る牛3頭を倒したり、改造バイクで空を飛んだり、長刀でトラックをまっぷたつにしたりする。
 大好きな漫画だ。
 小細工なし。理屈なし。
 高校生でもこんな台詞だ。
 「フフフ・・・花沢三人衆とは、わしらがことよ」
 「・・・以上三名、三年間のつとめよりただいま戻りましてございます」
 3年間も少年院に入ってたら、すでに成人していると思うのだが、そんなつっこみを入れるのは無粋だ。
 30億円くらい予算をかけて、丹念に実写映画化して欲しい。
 絶対に通らない企画だとは思うが。
 しかし、アニメ化ではなく実写化した方が、その桁外れさは際だつというものだ。
 ダメ映画になっても許されるくらい、世界観の懐が深い。