シュークリームを買う女子高生

 昨夜は5時まで起きて台本をガーッと書いていたので、今朝7時に起こされた時はさすがに父親が心配して、
 「昨日何時間寝た?」
 と聞いてきた。
 「2時間ちょっとかな」
 「そうか」
 母はそれを聞くと、
 「体壊すよ!」
 と言い、容赦なく朝飯をテーブルに用意した。
 「それ食ったら寝ろ」
 と父が言った。

 言われるまでもなく飯を食ったらすぐに寝た。
 12時に起きる。
 食ってすぐ寝たので、まったく腹は減っていない。

 4時くらいまで台本の直しをし、家を出る。
 電車の中で昨日買った椎名誠『カープ島サカナ作戦』読む。
 しかし、読み終えてから、これはすでに持っている本だということがわかった。

 買い物をして5時半帰宅。
 本棚を調べると、やはりその本はあった。
 たぶん一度しか読んでおらず、本屋で少しページをめくったくらいでは気づかなかったのだろう。

 うなぎを刻んで、ひつまぶしのようなものを作って食べた。
 鰻丼よりご飯量を稼げる点が気に入っている。

 夕方買った韓国のお酒を飲む。
 もち米とハーブを使った酒で、ワインのような風味がある。
 試飲コーナーで韓国の女性から勧められ、飲んでみると大変おいしかった。
 その女性がきれいな声で、
 「これもおつけします」
 と試供品のマッコリを笑顔で見せてくれたので、ついつい買ってしまった。

 その後コージーコーナーに寄り、コーヒーを飲む時のためにシュークリームを買った。
 自分の前にはおばちゃんがいて、ジャンボシュークリームとエクレアを沢山頼んでいた。
 後ろには黒髪の女子高生がいて、財布から出した500円玉を右手の親指と人差し指でつまみ、眉毛をすこし上げるような感じで目を丸くして順番を待っていた。
 (あれまあ、かわいい子だなあ)
 そう思い、さりげなく列を離れ、まだ他にも選ぶ品物があるフリをして店内をうろつくと、その女子高生はこちらを2回ほどちらりと見てから、いいのかなという感じでおばちゃんの後ろに並んだ。
 おばちゃんが会計を済ませると彼女はつまんだ500円玉をそのまま少し高い位置に上げ、ふわふわした声で、
 「ジャンボシュークリームを4つください」
 と言った。
 「お持ち帰りのお時間はどのくらいですか?」
 「2時間です」
 店員がシュークリームを袋に入れている間、彼女はいっそう眉毛を上げ、その目はほとんどまん丸といっていい感じになっていた。
 「お待たせしました」
 500円玉を丁寧渡し、シュークリームとお釣りを受け取ると、その女子高生は目をまん丸にしたままかすかに笑い、慎重に傘を差して店を出て行った。