通し、そして飲み、そして朝

 昼の1時に沼袋へ。
 ペットボトルで水を買う。
 昼は、綾香と鶴マミの特練。
 アイディアを出して動きを固めていく。
 練るのはもう少し先。
 体の使い方なども、その時におさらいすることになる。

 音を決めていく。
 前半よりは後半にかけることが多い。
 多いといっても、芝居の上演時間に比しては決して多くない。
 音楽をかけっぱなしでもできる芝居だとは思うが、そういうのはあまり好きじゃない。
 舞台に出ている役者の息づかいだけで、音に対する欲求不満を解消させなくてはいけないと思う。
 でないと、肝心要の音が弱まる。

 夕方から他の役者がぞろぞろやってくる。
 7時から通し。

 通し中、デジカメで何シーンか映像を撮ってみた。
 なぜか、久保田君ばかり撮ってしまった。

 http://homepage2.nifty.com/tsuka-moto/060624.wmv

 稽古後、全員で飲みに行く。
 沼袋のつぼ八を襲うが、満員だったので、中野へ移動。
 いつも行く魚民へ入り、飲む。
 全員そろった飲み会は、顔合わせの時以来だ。

 ビールを2杯ほど飲んだら帰ろうと思っていたのだが、久しぶりに楽しかったので、その場に居続ける。
 居続けるまま杯を重ね、しまった! と思ったときには焼酎のボトルに手を出していた。
 そのボトルを頼んだのは久保田君で、すでに1本空けている。
 店員がパフェをたくさん運んでくる。そのうちの一つは自分が頼んだらしい。
 パフェと焼酎とやけくそしゃべりで、終電時間を瞬く間に過ぎてしまった。

 帰れる者は帰る。
 俺は帰れないわけじゃなかったのだが、飲み足りなさそうな鶴マミと、終電を逃して呆然とした健ちゃんを見て、二人をほっぽらかして行くのはかわいそうだなと思った。
 「私の知ってる店行きましょう!」
 と、鶴マミに案内され、韓国居酒屋へ案内される。
 ウーロン茶を1杯飲んで、テーブルに伏してしまう。

 起きると、明け方だった。
 店のママさんは気のいい人で、
 「あなた、目が怖いよ」
 と、起き抜けの俺に会話をふってきた。
 もうろうとした意識のまま、精一杯の笑顔を作り、
 「これ、地顔です」
 と答える。
 テーブルの向いには、久保田君が殺された野生動物みたいに寝ていた。
 (俺たち、死んだのかな?)
 と、心の中で久保田君に語るも、彼は起きなかった。
 鶴マミは酔いを深め、
 「不安です!」
 と、芝居の不安を口にしていた。
 主役で、台詞も多く、しかも少年役であり、さらに転職と引っ越しも重なっているのだから、ハードさはそりゃわかる。
 わかった上でその言葉を聞き流し、涼しい顔で稽古を続ける。
 涼しい顔の鬼は、青鬼か?

 5時くらいに店を出る。
 最後まで飲んでいたのは、片桐、しのちゃん、健ちゃん、鶴マミ。
 4時半くらいまで寝ていたのはオレ。
 5時近くまで寝ていて、オレにウーロン茶のしずくをかけられて起こされたのが久保田君。
 店のママさんはとてもいい人で、鶴マミのことをぎゅっと抱きしめていた。

 そとはすっかり明るい。
 飼い猫が散歩をしていたのを見つけた鶴マミは、嫌がる雌猫の前足を捕まえ、キスでもしかねない勢いで愛撫していた。
 猫は、
 「シャーッ!」
 と言って抵抗していた。
 空は曇っていた。

 6時前に帰宅。
 シャワーを浴び、ラストの台詞を考えながら、眠りに落ちる。