一年後

 いつの間にか引っ越してから1年が過ぎていた。
 なのに、引越当初と比べて、部屋の感じはあまり変わらない。
 昨年8月末に入居した直後に、パーマ企画公演の稽古に入った。
 そして公演終了後すぐ、マグの年末公演の稽古に入った。
 あっという間に4ヶ月を消費し、疲れ果てた心身を年始に持ち越し、部屋のレイアウトをああしようこうしようという熱意は2005年に置いてきてしまった。
 そして2006年の果てもうっすらと見えている。
 果ての手前には、マグの芝居がある。
 今年は千秋楽後、年末を迎えるにあたって一週間の猶予があるから、気が楽だ。
 おっとりとほろ酔い気分で年を越したいものだ。

 日曜日からの頭痛のせいで、部屋を片付ける気力はすべて頭痛と対処するためのエネルギーに費やされてしまった。
 だから今、オレの部屋は散らかっている。
 部屋は心を映す鏡であるそうだから、オレの心も散らかっている。

 窓際には朝顔の鉢がある。
 8月15日に一輪だけ咲き、あとは葉っぱのまま夏休みを終えた、朝顔観察日記キラーの朝顔だ。
 ところが、ここにきて急につぼみをぽこぽこつけはじめた。
 なんだ今頃。やる気あるのか。

 『二十世紀俳優トレーニング』をパラパラめくる。
 20世紀に登場したさまざまなトレーニング技法。
 その提唱者ごとの論文集。
 一般向けの書籍というより、大学の演劇ゼミでテキストとして使われそうな本だ。
 読み口は渋く、わかりやすさと一線を画している。
 それでも、時折面白いと思える記述もある。
 帝政ロシア時代のスタニスラフスキーが貴族の家出身で、金には困っていなかった話とか。
 取り上げられた全員の論文を読むのはホネが折れるので、興味のある演劇人のところだけ読むことにする。
 いわゆる有名どころ。ブレヒトとか。

 夕方、高井戸のオリンピックで買い物。
 1年ぶりに訪れた。
 牛ステーキ肉が安かった。
 しかし、下駄みたいに分厚くでかい肉だったので、一番小さいものを選んで買う。
 他に、白モツ、にら、豆腐なども買う。

 もつ鍋とキムチ鍋が合わさったようなものを作って食べる。
 具材はもつ鍋寄り。味はキムチ鍋寄り。