初通し

3時に稽古場入り。
昼の間、後半シーンの稽古が重点的に行われていた。

稽古場外で剣をふるおうかと思ったが、小春日和の午後3時、閑静な住宅地でそれをやれば通報される危険性もあり、自粛した。

その代わり、入り口近くで背筋を地味にやっていたら、自転車を入り口に停めていた主婦から、
「冷たくない?」
と言い放たれた。
どういう意味だろうと一瞬考えてしまった。
「(あたしの気持ちも知らないで、あなた)冷たくない?」
では、まさかあるまい。あんたのこと知らないし。

要するに背筋運動をしている時にお腹が地面についているのが、
「冷たくない?」
だったのだ。考えなくてもわかりそうだが、運動をしている最中、頭はすこしバカになる。
わかった瞬間、背筋をしながら主婦に答えた。
「熱いっす!」

言うに事欠いて「熱いっす!」はないと思う。サラリーマン金太郎を思い出す台詞じゃないか。
しかし背筋運動のリズムに乗せるとそういう言い方になってしまうのだった。

5時に稽古場移動のため食事休憩。
稽古場に来たときから目をつけていた中華料理屋に入る。
いかにも<町の中華屋>といったたたずまい。
こういう店の五目そばが昔から好きなのだ。
佐々木君と一緒に入る。
彼はみそラーメンを頼んだ。
しばらくすると一石君も店に入ってきてカツカレーを頼んだ。
「カレーがメニューにあったらカレーを頼むんス」
一石君は力強くつぶやいた。
五目そばはボリュームもあり旨かったけど、一石君の頼んだカツカレーの方がもっとボリュームがあり旨そうだった。
なんだか試合に勝って勝負に負けたような、たとえるなら「愛のエプロン」に出場して敗北したような空しさを覚え、早足に店を出ると稽古場移動の時刻だった。

6時半に稽古場移動。
7時より初の通しをする。
自分のシーンはどのシーンの次なのかを、改めて台本を見つつ確認する。
出トチリは避けたいものだ。

初通し独特の緊張感から、台詞のトチリや噛みが目立ったが、芝居が完全停止する壊滅的ミスはなかったように思う。
クライマックスにかけての立ち回りは動きが完全ではないため、一つ一つ追うように演じられたが、それでも利士さん、NAO-G、蜂須賀さんの殺陣は格好良かった。

稽古後、近くの神社で簡単なミーティング。
最年長の山下さんが、芝居の基本に立ち返るべく檄を飛ばした。

学芸大学駅そばの店で飲む。
利士さん、今日平君、福地君、賢さんのテーブルに座り、とめどなく語られるエロ話を聞く。
エロ話はドミノ倒しに似ており、一度始まると止まらず、そして続くことそのものが面白い。
が、エロ話は女子に対してフィルターの効果を発揮し、腹の据わった女子以外を寄せ付けぬ。

12時に店を出る。
福代さん、濱田くんと一緒に井の頭線のホームへ。
ところが吉祥寺行き最終電車のアナウンスが流れ、切符をかう暇のなかった俺に濱田君は走りながら、
「塚本さん、これ!」
と、私鉄のカードを渡してくれた。
バトンのようにそれを受けとり、改札を矢のように駆け抜け、終電に間に合った次第。
なんだか亡命でもするみたいだった。

1時帰宅。
『三国志 英雄ここにあり』中巻読了。