インドの話

大学時代の後輩K君と夕方渋谷で会い、センター街で焼き肉を食った。
注文を取りに来た店員の女性は肌が浅黒かった。
「インドの方ですか」とK君は声をかけた。
彼女は「スリランカです」と答えた。
「いいところですね、僕、インドは行ったことあるんですよ」とK君は言った。
彼がインドに旅行したのは10年ほど前のことだ。
焼き肉を食べながら、インドの話を聞いた。

水にあたりひどい下痢になった時、ホテルの男によく効く薬を勧められ、言われるまま金を払うと、持ってきた薬がコカコーラだったそうだ。
「それでも藁にもすがりたくて、コーラ飲みましたよ」
北部からネパールに入る頃下痢は治まり、ステーキを食べまくったが、帰国する頃には手の先に震えが見られ、帰国してからは3日間寝込んだという。
「もう二度と行くもんかと思いました」
それでも今は、また行きたいと思っているという。

トルコに旅行した時の話も聞いた。
彼はボスポラス海峡の橋で二人組のチュニジア人と知り合い、終日行動を共にした。
日没近くになって一人が「クッキーが食べたい」と言い出した。
公園の売店で買ったクッキーを一枚勧められた。
食べてみるとミントの味がした。
好きな味じゃないなと思い、それから意識が途切れ、気がつくとホテルの部屋で寝ていた。
目の前にトルコ人が立っていて、起きた彼を見て笑みを浮かべ、部屋を出て行った。
間もなく日本大使館の駐在員が入って来て、君は公園で倒れていたところを発見されたと説明した。
ポケットにホテルの名刺が入っていたため身元がわかったのだそうだ。
もちろん身ぐるみはがされていた。

その後、クレジットカード会社から連絡があった。
トルコのデパートで、彼のカードで電化製品が沢山購入されていることの確認だった。
「日本人がわざわざトルコのデパートで電化製品買わないですよねえ」
K君は言った。

K君の話はとても面白かった。
2時間で店を出なければならないのがもったいなかった。

10時帰宅。
疲労を強く感じ、12時過ぎに寝た。