『楽屋』見る

朝10時過ぎに江戸川区の船堀の堀口養魚場へ行った。
モチメの取材の付き添いで、金魚の写真を撮るのが目的だった。
船堀駅から南東へ延びる道を歩くと見覚えのある道にぶつかった。
実家でジョギングする時のコースだった。
そういえば梅雨時の夜にジョギングをしていると、そのあたりで蛙の鳴き声が聞こえた。
養魚場にいた蛙だろう。

堀口養魚場は閑散としていた。
池に金魚の姿はなく、隅の方にあるビニールハウスでは、養魚場の人が水槽の掃除を黙々としていた。
一般客を迎える雰囲気ではなさそうだったので、他の養魚場に移動した。

新大橋通りを越えて北にある佐々木養魚場へ行った。
そこは一般客に金魚を販売している関係で、プレハブに大きめの水槽が沢山並んでいた。
和金の写真を沢山撮った。
赤い金魚が狭い水槽に密集し泳ぐ様は、顕微鏡で見た赤血球のようだった。

船堀駅近くのトンカツ屋「田」で昼食をとった。
日替わりセットを頼んだ。
内容は、大葉の肉巻きを揚げたものと、エビフライと、ボテトフライだった。
この店は、ご飯とキャベツのお代わりができる。
ソースがうまく、キャベツは柔らかい。

12時40分に上野小劇場へ。
大多和愛子さん出演する『楽屋』を見た。
客入れ中、隣の席に座ったお客さんから声をかけられた。
見ると、いつもマグネシウムリボン公演で舞台監督をしていただいている日高さんだった。
「まさかこんなところで会うとはねえ」
日高さんは言った。

チェーホフ『かもめ』のニーナ役を演じる女優の楽屋が舞台である。
楽屋には、幽霊とおぼしき二人の女優がいる。
愛子さんは空襲の傷が生々しい女優の霊をやっていた。
幽霊女優によるコミカルなやりとりのあと、ニーナを演じる女優が舞台を終えて戻ってくる。
彼女は帰り支度をしている。
そこへ、病院を抜け出したらしい、若い女優が戻ってくる。
「健康になったんです。だから、ニーナ役を返してください」
と若い女優は言う。
ニーナ役の女優は苦笑いして言う。
「あんたまだ治ってないわ」

ニーナ役の女優Cと、病気の女優Dによるやりとりは、女優論となっている。
女優という生き方の辛さ、過酷さ、はかなさが、女優Cによって語られる。
ところが、その苦しみが女優だけのものではなく、あらゆる人々に共通のものに感じられてくるのが、この戯曲のマジックだと思う。
チェーホフ作品の引用による効果も大きい。

終演後、日高さんに、またマグネシウムリボンの公演を頑張ってやってくださいと言われる。
「ありがとうございます」
心から礼を言う。

劇場の外で愛子さんに挨拶し、中目黒へ向かう。

3時過ぎに稽古場に到着するが、時間がやや押しているとのことだったので、アップ時間を1時間もらった。
30分ほどジョギングをした。

ジョギング後、小返しを少ししてから食事休憩。
その後、音響と照明のオペさんを迎え、通し稽古をした。

5本ある演目のブリッジが短く、着替えが大変そうだった。
場合によっては3本目の衣装の上に2本目の衣装を着るということをしなければならないだろう。
途中、『コンテスト』で2回台詞が止まった。
それ以外でも怪しい部分があったが、同じような内容の言葉で埋め合わせて強引に切り抜けてしまった。

トータル時間は予定よりも長かった。
テキスト量を考えれば想定内ともいえる。
テンポを上げることで縮まる時間は、おそらく10分から15分の間だと思う。
あとは、各シーンごとに1割ほどカットすれば、小気味よいテンポで芝居が展開するんじゃないかと思う。

夜、トーストと炒り卵を食べる。
ジンとオレンジジュースと炭酸で飲み物を作り、水のようにそれを飲んだ。
酔いの周りが早かった。