式翌日

朝8時に起きた。
夜遅くまで飲んだので、食欲があまりなかった。
サラダだけにするつもりで下に降りた。

レタスと卵とポテトサラダ、ゆでたソーセージ、それにコーヒーを飲んだ。
食べ終わったら食欲がわいてきたので、おかゆと野沢菜を食べた。
そしてまたコーヒーを飲んだ。

隣のテーブルには、新婚の緑ちゃん、美和ちゃん、はしぐちさんがいた。
美和ちゃんは結局、明け方の5時頃まで宇原君と激論を戦わせていたらしい。

荻野君と宇原君も起きてきた。
「俺は途中で寝ましたけど」
と荻野君。

「どうします?チェックアウトする前に温泉入っていきますか?」
荻野君が言った。
「いいよ、たぶん気持ちよすぎて寝ちゃうよ」
「じゃあおれ入ってこようかな」
ところが男湯は、チェックアウト直前の9時から掃除の時間になり、入ることができないらしかった。
チェックアウト後は料金を払えば入れるとのことだったが、そこまでして入ることはないと荻野君はあきらめたようだった。

仕事のため、イーノ君と関君は明け方の5時頃帰っていた。
東京に着くのはお昼前後だろうか。

10時にチェックアウトを済ませる。
ホテルの入り口には緑ちゃんと中山君が親戚の出迎えに来ていた。
中山君は二日酔いのためか、あるいは緊張から解放されたためか、水難救助犬に助けられた受験生のように虚ろな顔をしていた。
目が死んでいるというレベルの虚脱感ではない。
死んで、松のチップで丁寧に燻され、お歳暮として送られ、冷蔵庫にしまわれ、そのまま半年間忘れられたみたいな<生からの遠さ>だった。

食後、ホテルの周りを散歩した。
ギギギギギギギギ…と鳴く鳥がいた。
ねじまき鳥かと一瞬思ったが、そんな鳥がいるわけはない。
部屋に戻って荷物をまとめる。

先に帰ったイーノ君と関君の代わりに、美和ちゃんとはしぐちさんが車に乗ることになった。
豊科から中央自動車道で帰ることに。

途中、女子二人のリクエストに答え、ホテル近くにあるジャンプ競技場を見学した。
入場料500円を払い、リフトに乗った。

ラージヒルの展望台から、選手のスタート地点に階段を使って上った。
階段は建材丸出しといった感じで、空気抵抗を防ぐためか穴が沢山あいている。
その穴から、100メートル下の地面が見える。
高所恐怖症の人にとっては罰ゲームみたいな階段だった。

リフトを降りようとした時、急に雨が降り始めた。
上る時は快晴だったのに、山の天気は変わりやすい。
やむまで10分ほど待った。
リフトの下りは、上りよりも怖くなかった。
案外、ジャンプする時もそうかもしれない。

ジャンプ台の高さに辟易していた宇原君とその場で別れ、豊科に向かった。
途中、美和ちゃんが少し車に酔ったので、道の駅でかんたんに食事をした。
ついでにおみやげなども買った。

昨日遅くまで起きていたため、車中では皆言葉少なだった。
道はすいており、豊科から境川まであっという間だった。
トイレ休憩をとるために外に出ると、太陽の光が真夏の強さで肌を差した。

昼3時半頃に調布に着いた。
はしぐちさんを駅前でおろす。
そのまま環八に出て、荻窪でおろしてもらう予定だった。
ところが、荻野君御用達の抜け道を走っていると、うちの近所にあるファミリーマート前に着いてしまった。
迷うことなく、そこで降ろしてもらった。

4時半帰宅。
あわただしい旅で、ほとんど観光もできなかった。
しかし、不思議な品格のある、いい結婚式だったなあと思う。

二日間で色々な話題、ネタ、出来事があったが、時系列に沿って書くのはめんどくさいので、箇条書きに書いてみる。

・中山君が結婚したのは本物ではなく、宇原君が連れてきたミドリの影武者である
・行きの車中、緑ちゃんのために踊るのだということをわかってもらえるだろうか心配で、イーノ君はほんの少し涙目になっていた
・チェックアウトした竹内君は白馬駅まで歩いて健脚ぶりを印象づけたが、そのため車中の我々は途中の道々で自転車をこぐ人を見つけては「あ、竹内君だ」と言っていた
・三次会の開場は中山夫妻の部屋だということを宣言してから中山君が言った台詞は「おまえらー、新婚初夜の部屋だぞ!」
・三次会に行く前、中国の動物園で生きた牛を数十頭の虎に喰わせている映像を部屋のテレビで見て驚いた
・「鏡田も親から生まれてきたんだねえ」と不思議そうに話すはしぐちさんの言葉を受け、「鏡田君、君ってちゃんと人間の両親いるの?」といきなり質問したら「いますよ!」と怒鳴られた
・ロビーに夫婦のアルバムがあった。その中に昨年8月5日と思われる、中山・荻野、わっちゃんによる海水浴の写真があり、上半身裸の中年男がランチョンミートのような上半身の肉をふるわせ、アクメに達したような笑顔を浮かべていた
・俺も誘われていた

今しかない海しかない
 おそらく一年で最も暑いであろう週末に、ねらい澄ましたように片瀬海岸へ行った。  夏は海だ。  冬、温泉につかるより、夏、海につかった方がい...
・荻野君の顔は「結び目」に似ている