三度目の振り込め詐欺

夕方、買い物をして帰宅すると、ドアに紙切れが挟まっていた。
二つ折りになったそれは、母親の書き置きだった。
部屋に入り読むと、こんなことが書いてあった。

あなたはどこにいるのですか。ひどい風邪でしたけど、大丈夫なの? お金が必要そうだったから用意してきたのにいないし、母にはあなたのことがわかりません。誰かに脅されているの? 父も心配して家で待っています。帰ったらとにかく連絡すること。

頭の中がたちまち「?」で埋まった。
すぐに母親の携帯に電話をする。
彼女はまだ近くにいた。
外に出て会う。

母の話によれば、お昼前に俺の声で電話があったという。
ひどく咳き込んでおり、風邪をこじらせたと言っていたらしい。
「携帯の番号が違うわよ?」
「前のはトイレに落としたので、新しいのを買った」
「医者行ったの?」
「行った。薬もらった」
こんな感じのやりとりがあった後、2時くらいにもう一度連絡すると言って、その男は電話をきったそうだ。
しかし2時になっても電話はなく、リダイヤルしても圏外でつながらなかったので、様子を見るため実際に俺の家に来たということだ。

これは間違いなく、「振り込んでくれ」とひと言も言わず、相手の口から「お金が必要なの?」などの言葉を引き出すタイプの、新手の振り込め詐欺だ。

母は過去2回、振り込め詐欺に引っかかりそうになっている。
おそらく最初の時に電話番号がデータベースに登録されてしまい、新しい手口が開発される度にターゲットにされているのだろう。

「見ての通り俺はピンピンしてらあ」
「でもあれは確かにあなたの声だったわよ」
無実の罪を着せられたような気分になり、母と別れる。
気分がぐったりしていた。

絵本『弁天池の金魚』が刷り上がっていた。
オール切り絵の絵本。
西荻のニヒル牛2で、今日から原画展が始まっている。
夜、モチメから連絡あり。
10部売れたとのこと。
俺からDMをもらった斉藤さんという人が来たという。
斉藤さん? 誰だろう。
芸名を使っている役者さんだろうか?