急に呼び出され飲む

夕方、熱気がこもる我が家へ帰ってきたら、オギノくんからメール。
「今日飲みませんか?」
突然のメールであったが、彼がそんなメッセージを寄越すのには事情があるからだろうと察し、行くと返事をした。

7時過ぎに新宿へ。
待ち合わせ場所のビアガーデンに行く。
入り口は1時間待ちの客がたむろしていた。
オギノ君に電話をする。
「今着いたよ。ここチケット性だよね?」
「え?大丈夫です入れますよ」
「入れるの?」
「ちょっと待ってください、どこにいますか?」
「ビアガーデン」
「あ、違います、今別の店にいます」

受信し損なったメールに、店を変えた旨が書いてあった。
エレベーターを降り、その店に向かう。

オギノ君の他に、中山君がいた。
「いやあ、どうもどうも」
5月以来である。

おしぼりで手を拭きながら、単刀直入に訪ねた。
「嫁が旅行か?」
「そうです」

奥さんが子供連れで実家に泊まるというので、それならば誰かと飲もうと思ったらしい。

「片桐にもメールしたんですよ。そしたら奴は、『急過ぎ。勝手過ぎ。じゃあ俺も今度いきなり飲もうぜってメールしてやる』って返事寄越しました。失礼な奴です。志乃さんにもメールしました。来られたら来るそうです。あ、そうだ、小林さんにも電話してみよう」

共通の知人である小林君に電話をするオギノ君。
「…あ、もしもし、お久しぶりですー、飲みませんか?」
なるほど、急過ぎだ。
中山君が神妙な顔をしている。
「…小林さんかあ。緊張するなあ。もし小林さんが来たら、僕は後輩の顔になるからね」

オギノ君から携帯を渡され、2年ぶりくらいに小林君と話す。
寝ていたのか、うつろな声が聞こえた。
「ども…お久しぶりです…」
長話も迷惑だろうと思い、中山君に携帯を渡した。
軽く咳払いをし、後輩の声で彼は話し始める。
「もしもし、お久しぶりです。中山です」

そんな感じで、3人だけの<オギノ祭>は進行していった。

話題となったのは結婚生活の諸々。
リアルすぎて笑えない部分もあり。

10時過ぎに店を変える。
近くのアイリッシュパブに行く。
「僕はこういう店が好きなんですよ」
と中山君。
「なんで?」
「アイリッシュパブだからですよ」

答えになってねえじゃんと思いながら店内へ。
ジンバックを頼む。

中山君のイギリス日本人学校教師時代の話を聞く。
「友達がいないという状況でしたね」
と中山君。
「教える相手は日本人だし、子供だし、周りの先生はみんなかなり年上だし、話の合う年齢の知り合いがいないんですよ。でも、しばらくして僕の2?3歳上の教師が入ってきて、それでずいぶん楽になりましたね。それから、僕が働き始めてから、ポンド安になっちゃって、給料が下がりました」

新婚ルール適用で、中山君は終電で帰った。
その後、終電近くまでオギノ君と話す。
芝居への思いは、まだあるらしい。

12時半に店を出る。

急に呼び出されて飲んだ割には、色々な話が聞けて面白かった。
1時過ぎ帰宅。