この稽古場日記もデータベースのひとつ

10時起き。
OKストアで買ったまずいラーメンの、塩と味噌を一緒に茹で、調味油を足さずに食べる。
午後、西友で買い物。
HDMIケーブル、DVDのケース、分波器、同軸ケーブル買う。

TSUTAYAに寄って、ビートルズの映画を探す。
なかった。

2時過ぎ帰宅。
新しく買ったケーブルでTV端子とTVをつなぐ。
チャンネルサーチをやってみる。
受信できなかった。

これは、TV端子に電波がきていないに違いない。
そう思って、マンションの管理をしている不動産屋に電話をしてみた。
年末はコールセンターにおかけくださいという自動メッセージが流れた。
コールセンターの電話番号をメモし、かけ直してみた。

「…不動産の物件なんですが、壁のTV端子に地デジの電波が来ていなくて、新しく買ったテレビが見られないんです」
「テレビの設定に問題があるかもしれませんので、一度メーカー様に問い合わせていただけますか?」
「いや、僕も玄人じゃありませんけど、テレビの接続くらいわかりますよ。チャンネルサーチもマニュアル通りですし、何度もやってる作業ですから。それにね、さっき屋上に上がってみたら、UHFアンテナと衛星アンテナが立っていて、同軸ケーブルが数本伸びていたんです。だから工事はちゃんとされていると思うんです。問題は、僕の部屋にそのケーブルが配線されているかどうかなんです」
「そうですか…年末ですので、管理会社さまは営業していらっしゃらないと思いますけど、こちらで連絡をして、折り返しますので、お待ちいただけますか?」

少し待っていると、電話がかかってきた。

「もしもし?」
「塚本さんですか? 大家の…です」
「あ、どうも、お世話になっております」
「そのね、地デジの件なんですけどね、うちのマンションはアンテナ工事、やってもらってるんです。けどね、塚本さんの部屋だけ、室内工事が終わってないんですよ」
「は? それはどういうことでしょう?」
「工事の人が何度かおたずねしたけれども、お留守だったと言ってらしてね、それでたぶん、塚本さんお部屋だけ、電波が来てないんだと思います」
「やっぱりそうでしたか。じゃあどうすればいいんでしょう?」
「業者の方の電話番号をお教えしますので、まずはそちらにかけていただけますか? なにぶん年末ですので、お出にならないかもしれませんが、自宅の番号もお伝えしますので、伝言をお願いすると良いかもしれません。お金はすでに支払っておりますので」
「わかりました。それじゃ、かけてみます」

電場番号を二つ教えてもらった。
ひとつ目は携帯の番号だった。
かけてみた。
録音メッセージが流れ、変なスキャットが続いた。

「…もしもーし、はんにゃでーす。今ね、持ち主が出ないみたいなんでね、ちょっと待っててくれるかなあ…(めちゃくちゃな言葉でリズムにノリ始める)…」

しばらくすると一巡し、

「…もしもーし、はんにゃでーす。今ね、持ち主が…」

電話を切った。

自宅の番号に電話をしてみると、留守番電話のメッセージが流れた。
用件を吹き込む。

「…マンション…号室の塚本と申します。大家の…さんから、私の部屋はまだ室内工事が終わってないらしいとうかがいました。新しいテレビを買ったんですが、真っ黒い画面を前にして、途方に暮れてます。大晦日といえば紅白ですが、白組でも紅組でもなく、黒組というのはあんまりじゃありませんか。それで、なんとかしていただけないかなあと思い電話してみました。折り返し電話いただけると助かります。電話番号は…」

これでよし。

夕方4時、着替えて走りに行った。
東女を通り抜け、五日市街道のドンキホーテまで往復。15キロ。
ゆっくり走ったが、久しぶりの10キロ越えを、息切れせず走れたのは良かったと思う。

シャワーを浴び、着替えて、新宿に向かう。
焼き肉「ブラックホール」三丁目店で、学生時代の友達と忘年会。
今回の参加は、清水、榊原と、奈美さん美佳さん。
40分くらい遅れてしまったので、みんな結構な量の肉を食べていた。

ビールを頼んで乾杯をし、肉を追加注文して食べる。
肉はとても柔らかく、脂も美味だった。

仕事の話、家族の話など、リアルな大人の話をする。
三佳さんには12月の『その人ではありません』の公演案内メールを送っていた。
予定が立たなかったらしく、ごめんなさいメールをもらったのだが、次回予定が合えば見てもらえるかもしれない。
奈美さんも「案内ちょうだい」と嬉しいことを言ってくれたので、メアド交換をしましょうと拳を握りしめる。

たくさん食べたので、二次会で飲もうという気分にはならず、「らんぶる」に移動してコーヒーを飲もうということになった。
だが清水はケーキセットを、俺はクリームソーダを頼んだ。
クリームソーダを頼ませる雰囲気が、らんぶるにはあるのだ。

子供の通っている学校の、ちょっとした問題児の話が出る。
スカートをめくったり、胸を触ったりする少年がいるのだそうだ。
清水、榊原、そして俺は、中学1年生の自分をその場で思い出す。
そんなことをしていたら、自分がどういう扱いを受けていたかを想像する。

「その子は、周りの女の子に嫌われてないの?」

嫌われてはいないとの返事。

「あのさあ、もしかして、その子、ハンサム?」

イケメンとの返事。

「その子の家に、段ボール一杯のポテトチップスとファンタのペットボトルを週1回届けて、ブクブクに太らせればいいんじゃないか? 『俺はイケメンだから許される』っていうふうに思って思春期を通過する方が、むしろやばいんじゃないかな」

そんなことを、その場で言う。

女性二人は途中で返り、清水、榊原、俺は別の店を探す。
DuckyDudkがあいていたので、閉店までそこで話す。

清水が言った。

「俺、こないだ塚本のブログを読み返してみたんだよ。それで、2000年くらいに俺が結婚した時のを読んで、腹抱えて笑っちゃって」
「ああ、あの頃から書いてるからね」
「でさ、塚本遅れて来ただろ?」
「うん」
「俺、いつだったかお前に、あん時ラーメンでも食ってきたんじゃねえかって聞いたことあるんだよ。そしたらお前、滅相もないって顔して、『そんな失礼なことするはずないだろ』って言ったんだよ。ところが、お前のブログ読んでたら、俺の結婚式の日に、やっぱり中野でラーメン食ってんだよ!」

あちゃー、である。
その時のブログはこれ。
https://mgribbon.com/20001014/iiie.html
当時はブログじゃなくて、htmlに直接書いたWeb日記だったが。

「あともっと笑ったのは、2000年の3月くらいに、俺、嫁と塚本の部屋行ってるんだよ」
「でもその頃のことは、マグのサイトには載せてないよ」
「いや、昔こういうことがあったっていうふうに、書いてあったんだよ」
「すき焼き食べたんだよね?」
「そう。俺が、あんきもの差し入れ持ってったの」
「ああ!」

2000年の3月は、二十代で最も苦しい頃だった。
そんな時、清水が婚約者を俺に紹介してくれることになり、わざわざうちまで来てくれたのだ。
差し入れ何が良いか彼が聞くので、コンビニに売っているあんきもの缶詰が好きだけど、ちょっとしか入ってないから、沢山食べてみたいというようなことを話した。
清水が買ってきたのは、つまみ以前の、食材としてのあんきも缶詰だった。
500グラム缶で、缶切りであけると、あんきもが缶にぎっしり詰まっていた。
裏返しにして缶の背を叩くと、円柱状のあんきもがプルプル震えながら皿に出てきた。
それは、宇宙船のクルーに巣くった地球外生物が、別の宿主を求めて死体の口から這い出すようで、食欲をそそられる眺めでは決してなかった。

「あと、年末に芝居出たろ? そんで俺らの背中に合掌したって書いてあったぞ。榊原も見てるはず」
「俺? ああ、中野でやったやつね。思い出した。その時、一緒にいたあいつが、偉そうに文句たれるから、なんでそんな偉そうにするんだよってむかついたんだよ」

稽古場日記といいながら、その実ただの日記であるこの日記だが、これだけ長い期間アップしていると、blog内検索機能を使えば、データベース的に使うことが出来るという例だろう。

11時半に店を出る。
実家に帰る予定だったので、地下への階段を下りたところで二人と別れる。

12時半に西葛西着。
父は起きて映画を見ていた。

「飯食ったか?」
「散々食った」

そう答えて部屋にこもり、着替えてすぐに寝た。