従姉妹の前夜式

夕方、仕事を終えてから大江戸線で東新宿へ。
亡くなった従姉妹の前夜式に参列する。

ロッカーに荷物を入れ、職安通りを大久保方面に歩く。
道ぞいに新宿西教会のビルがあった。
エレベーターで上に上がる。
妹が受付を手伝っていた。
「あれ? ひとり?」
両親と一緒に来ると思っていたらしい。

母に場所を教えるため、1階に降りてメールをする。
送信ボタンを押してすぐ、両親と甥三人が到着した。
受付を済ませ、真ん中よりやや後ろの席に座る。
椅子に式次第を書いたプリントがおいてあり、賛美歌の歌詞と従姉妹の略歴が載っていた。
子供の頃から教会の日曜学校に通っていたらしい。

6時半に式が始まった。
賛美歌を歌い、聖書のお話を聞く。
聞きながら従姉妹の人生に思いをはせる。

祖母が生きていた頃は親戚で集まることが多かった。
小学生の頃までは、年に数回会っていたと思う。
どういう話をしたのかは、まったく覚えていない。
中学に上がってから親戚の集まりというものがほとんどなくなった。
祖母が死に、叔父が新宿から神奈川に引っ越したことが関係していたかもしれない。

一番上の甥が、ハンカチを目に当てながらすすり泣いていた。
妹は親戚づきあいをまめにする方で、夏になるとベランダで花火大会を眺めながら宴会するのを恒例行事にしていた。
従姉妹はそれに毎年参加していたらしい。
甥にとって彼女は、とても近しい親戚だったのだ。

最後に叔父が、遺族を代表して挨拶をした。
途中、何度も絶句していた。

献花をし、従姉妹の遺体と対面する。
左手で棺に触れ、礼をし、叔父と叔母に挨拶をする。
従兄弟に握手をして礼をする。
従兄弟は怪訝そうな顔をしていた。
「健一です」
と名乗ると、合点のいったような顔をしていた。
十何年ぶりに会うのだ。無理もない。

親族の休憩室でお茶をいただく。
叔父夫婦の目の前に座る。
「ご立派になられて」
と言われた。

妹から写真を何枚か見せてもらう。
夏に妹の家で宴会をした時の写真。
最後の写真は二年前の夏で、その時すでに病魔に冒されていたのだ。

両親、妹、甥三人と教会の前で別れる。
東新宿から大江戸線に乗り、地下鉄で荻窪帰宅。
家に帰り、いただいた封筒の中身をあけると、メッセージカードが入っていた。
従姉妹の直筆で、
「私は少し早く逝きますが、時折思い出して下さい。思い出して下さることが何より嬉しく思います。いままでありがとうございました」
と書かれてあった。
どういう気持ちでこれを書いたのだろう。

メッセージカードは、しばらく持ち歩くことにしてみようと思う。
その方が、何かを心に刻みつけることが出来るかもしれないし、それによって何かが確かに残されたということになるかもしれない。