カンヅメ計画、シリーズの想い出

次回公演『賞味期限の切れた毒薬』の舞台設定がなかなか決まらない。
キャスト探しに難航したので、7月は具体的なことではなく、作品のトーンや演出の方向性など、抽象的なことを中心に考えた。
先に台本を書いた場合、キャスト探しは失敗するだろうとも思った。
あて書きがしたいのではなく、先に書いた台本に合った役者探しになると、探す役者が限定される。
今回は広い範囲で新しい役者さんを探していたので、作りたい作品があり、役者を探しているということを伝え、それに対して「出たい」という反応を示してくれる人がいれば、それが縁なのだと思っている。

8月に入ってなんとかキャスト探しも落ち着いてきたので、具体的な場面や台詞を少しずつ書き足す。
が、進まない。
稽古初日は25日。
その前に集中的に書く時間をとらないと無理なので、来週末に休暇を取りカンヅメになることにした。
ネットで宿を探す。
3泊4日ともなるとなかなかあいていなかったが、熱海の食事なし部屋がなんとか取れた。
去年甲府でカンヅメになった時、2泊では時間が足りないと思った。
チェックインの日は実質夜しか書けないし、チェックアウトの日は朝っぱらに宿を出ないといけない。
真ん中に二日は欲しい。
本当は一週間くらいこもりたいが、なかなかできない。
観光価値のない土地のビジネスホテルの格安プランでもあればいいが、たとえば荻窪に住んでるのに中野でそれをやったら、バカバカしい。

とにかく来週日曜の朝までカンヅメになって、その日の夜が顔合わせになる。
やれるだけのことはやってみよう。

夜、昨日と同じくレモンチキンを買って食べる。
サンドイッチの具材としても使えそうだ。

ふっと気がゆるむ時、テレビをつける習慣がないので、本棚から本を出すかパソコンでYoutubeなどの動画を見る。
日本シリーズの過去動画を見た。
1983年の巨人対西武。
1992年のヤクルト対西武。
2003年の阪神対ダイエー。

日本シリーズは昼間にやるものという印象がある。
ナイターになったのはいつからだったろう。

後輩に小松という男がいる。
熱狂的野村信者だった。
92年のヤクルト対西武で、ヤクルトの秦がサヨナラホームランを打った時、アパートに一人でいた彼は、演劇仕込みの発声で「よっしゃー!」と絶叫した。
翌日の第七戦、部屋に遊びに行った。
テレビで試合を見ていると彼は妙に大人しかった。
どうしたのか聞くと、
「大家と隣人に、昨日怒鳴り込まれまして。今すぐ出て行ってくれと」
そう言いならも血走った目でゲームを見守り、時々握りしめるこぶしはぶるぶる震えていた。
ヤクルトが西武を無得点に抑える度に、無音のまま口を大きく開け、ヘッドバンギングをしていた。
行き場を失った彼のアドレナリンはそうやって哀しく消費されていた。

結局その試合はヤクルトが負けて西武がシリーズ三連覇を達成したのだが、もし彼がその日もギンギンに暑くなって応援していたら、あるいはヤクルトが勝っていたかもしれないと思ったりする。

自分も2003年の阪神とダイエーのシリーズ中、小松と同じ状態に陥った。
金本がサヨナラホームランを打った瞬間、興奮のあまり気が遠くなった。
その時の日記がコレ