なるべく通う荻窪ラーメン

昼、「丸信」でラーメン。
土日の昼に「いける」と思ったら、なるべく行くようにしている。

「丸信」は昔から好きだった。
初めて食べたのはいつだったか覚えていないが、おそらく90年代の終わりだったろう。
バイク便をしていて、帰り道に青梅街道を走る時、運が良ければあいていた。
その頃は夜の8時まで営業していたと思う。
だが、最後の配達がどこで終わるのかは、運次第だったし、青梅街道を西へ走るルートは夕方6時過ぎになるとひどく混んだ。
それに当時は、雑誌片手にラーメン屋巡りをするほど、ラーメンにこだわっていたので、「丸信」に行けなくても別に良かった。

やがてバイク便の仕事を辞め、荻窪に来る機会は減った。
それでも丸ノ内線の乗り換えや、当時チラシ印刷を依頼していた会社が荻窪に会った関係で、時々は降りることがあった。
そんな時に寄るのは、北口を出てすぐ右手にあった「珍来」だった。
もうなくなってしまったが。

荻窪駅前にふらりと降りて食べに行くには、「丸信」は微妙に遠いと、当時は思っていた。

やがて南荻窪に住むようになったが、総武線の南側だったので、「丸信」に行くことはなかった。
ラーメン自体、昔ほど食べなくなっていたこともある。
それでも、今はもうないが、西荻窪の「ラーメン大」にはよく通った。

線路の北側に引っ越して、「丸信」は距離的にぐっと近くなったのだけど、行くことはなかった。
代わりに、青梅街道沿いの「山ちゃん」や、上荻に移転した「二葉」、近所の「四麺燈」がよく行く店となった。

「丸信」によく行くようになったのは、去年からだ。
いつ行けば営業しているのか、ある程度把握出来たので、ふられることが少なくなった。
土日の昼に行けば、手堅い。
そして、土日の昼に行くと、結構混んでいる。

「春木屋」は、ほとんど行かない。
かつて、はとバスのコースに入っていたという噂もある、荻窪ラーメンの横綱店だが、人生トータルで10回も行ってないんじゃないか。

荻窪ラーメンとは何だろう?

・鰹、煮干し系の出汁がきいている
・澄んだ醤油スープ

でもこれは、かつての「春木屋」「丸福」の特徴ではないか。
「丸信」「珍来」も当てはまるけど。

行列の出来るラーメン屋というものが好きではない。
ラーメン屋に行列を作る心理がまずわからない。
行列ができているなら他のものを食べればいい。

「春木屋」はかつて、行列店だった。
今はそうでもない。
「丸信」は、行列店であったことがないと思う。
いや、以前の店舗時代は行列が出来ていたのかもしれないが、今の店舗で行列が出来ているのを見たことはあまりない。
店の中に順番待ち用の椅子がちゃんとある。
相席当たり前。
行列をつくるのではなく、つくらないように工夫している点は、ほめられていいと思う。

行列が出来ることは、恥だと思う。
その行列に並ぶお客は、じゃあ、何?
ほんとに、並ばない方がいいと思うよ。
「たかがラーメン」
と、我々が言っては、創意工夫する店主に悪いように思うけれど、創意工夫に対する敬意を表するのは、行列を作ることじゃなく、気軽に立ち寄る常連客になることじゃないか?

日曜日。
ラーメンのことばかり考えていたわけじゃない。
本も読んだ。
椎名誠『そらをみてますないてます』読了。
虚構度やや高めの自伝的私小説。
奥さんのいちえさんが登場するのが嬉しい。
そして、ほっそりとして病弱ないちえさんが時折見せる、炎のような熱情が、愛おしい。
婚約者のいた彼女が、椎名さんに惹かれていき、三人で会った末、椎名さんを選んだ場面。

「私を殺してください」

の一言に、ぞくっときた。

その秘めたる激しさは、結婚後の椎名誠を、千葉の暴れん坊から、それだけじゃない何物かに変えたと思う。
変えられるだけの激しい何かがいちえさんにあったから、たぶん椎名さんはああいうふうになったのだ。

夕立。
激しい雨が降った。

夜、唐揚げ、さばの水煮食べる。
さばの水煮、本当に飽きない。
シーチキンと似た系統の味だと思うのだが、油漬けではないためカロリー過多ではなく、身が大きいため食べやすいことが、消費者・Kの購入を促進していると思われる。