日本ベルギー戦

朝起きた時、体が重かった。クーラーがつけっぱなしだった。涼しかったので運転音がほとんど聞こえず、気づかなかったのだ。
水耕栽培にバケツ一杯分の水を足す。きゅうりが二本育っていたが、収穫せずそのまま吊しておいた。

冷やしておいたトマトを丸かじりしてみた。味が濃かった。

9時に家を出る。いつもより20分遅かった。
21分に初台に着いた。コンビニでコーヒーとあんパンを買い、あんパンを朝飯に食べた。

午前中、データベース作業とオペレーション作業を並行して行った。

6時半帰宅。サミットへ買い物に行った。
店の入り口に笹が何本か立てられていて、願い事を書いた短冊を吊せるようになっていた。願い事はささやかなものからグローバルなものまで幅広かった。神社の絵馬もそうだが、こういうものは何時間見ても飽きない。見ているだけで一本戯曲が書けそうな気がする。

きのこ類と卵を買って帰宅。最近よく作る「トマたま」のメンバーに、きのこも加入させて炒めた。

山下洋輔の演奏をYoutubeではしごし、11時前に就寝。ところが1時間くらい寝つけなかった。

横になっている時に一人芝居の案を思いついた。

舞台上に箱がある。男の首だけ出ている。首は、自分がいつからそこにいるか自問自答する。突然、少し離れたところから腕が飛び出る。首は、腕とコミュニケーションを図る。腕はしゃべれなかったが、生きものが近くにいることで、首は生きがいを感じるようになる。すると、今度は反対側から別の腕が飛び出てくる。先に出てきた腕より力強く、手には食料など持っている。首はその腕が気に入り、自分の「右腕」とする。しかし先に出ていた腕は、右腕に嫉妬し始め、「三人」の関係はギクシャクし始める。

タイトルは「首だけ」かな。古谷実が一昨年連載していた「ゲレクシス」みたいな内容だ。あの連載、続いて欲しかった。

うとうとし始めた3時に目覚ましが鳴った。起きると猛烈に眠かった。

ワールドカップ、日本ーベルギー戦見る。

まず、テレビの音を消した。
他国の試合はそうでもないが、日本の試合になると、アナウンサーは日本を応援する立場で実況する。そのため、惜しかったり、ミスを犯したり、ピンチを迎えたりした時に、最悪な事態への恐れを前提にした言葉で、発言を組み立ててしまう。
それは、選手たちがはるか昔に乗り越えてきた「雑念」なのだ。
しかし、コロンビア戦で岡ちゃんが言ってたが、ここまで来たらあとはやるしかないのだ。選手たちは皆、その境地にいる。だから、そんな選手たちを、ただ見ていればいいのだ。
アナウンサーの声が入ると、言語化された雑念は、見るものの脳を支配する。だから、音は消す。欲を言えば、会場の声援だけ聞きたいが。

前半。
落ち着いた立ち上がりだったが、ベルギーの方がコーナーキックが多く、ボールを支配している印象だった。日本は冷静に守っていた。メキシコや韓国のようなカウンター狙いという感じではなく、攻勢を前線で受け止め、押し返すような戦い方をしていた。

45分があっという間に過ぎて0?0。
喉が渇いていた。セブンイレブンに行くと、夜中の3時台というのに何人かの客がいて、食べ物と飲み物を買い求めていた。

後半開始直後、日本が点を入れた。フリーになった原口があっさり蹴り入れた。一瞬、何が起こったのかわからなかった。近くのマンションから女性の歓声が聞こえた。

その意味を感じる暇もなく、今度は乾がペナルティーエリア外から素晴らしいシュートを決めた。手を激しく叩き、「よし!よし!よし!」と声を出した。近くのマンションからまたも女性の歓声。

この時点でまだ、後半開始後10分も経過していなかった。残り時間を計算し、長いなと思った。

ベルギーは、あちこちにほころびが見えていた。個々の力は日本を上回っているのに、歯車が噛み合っていなかった。その隙を、噛み合った日本が攻めるという展開がしばらく続いたと思う。

しかし、ベルギーは、遠いところからのヘディングで1点を返す。ふわっと高く上がるボールだった。その前にゴールポストに当たったボールの方がよほどやばかったが、その1点でベルギーは気を取り直したように見えた。
続いて、CKからのヘディングでベルギーは追加点。たちまち同点に追いつかれたという感じだった。

その頃になると、経過時間はまったく目に入らなかった。目の前の展開をただ見ていった。ベルギーはやはり強い。パスをしながら攻め上がってくる時の、ボールの軌跡が鋭く、距離も長い。
日本は、相手に対して二人以上で立ち向かっていた。時には三人で当たることもあった。

本田のコーナーキックから、ベルギーはその鋭いパスで攻め上がってきた。コートを刃物で切り裂いているようだった。
ベルギー、得点。2?3。

倒れている選手がいた。なぜだろうと思って時間を見ると、すでに49分が経過していた。ロスタイムに入っていたのだ。気づかなかった。
次の攻めに入る前にホイッスルが鳴り、試合は終わった。

ベルギーの方が強かった。しかしサッカーは集団のスポーツで、ワールドカップは短期決戦だ。柔よく剛を制することはある。
そういう試合を日本代表が世界の舞台で見せたのは、この試合が初めてじゃないかと思った。
フランス大会、日韓大会、ドイツ大会、南アフリカ大会、過去の戦いで格上を制したのは、日韓のロシア戦、南アのデンマーク戦か。でも、今回ほど相手との差はなかった。アトランタ五輪のブラジル戦も格上ではあったけど、戦いきったというより、暴風雨を凌ぎきったという感じだった。
今回は、正面でぶつかり合っていた。ベルギーの方が押していたし、リーグ戦だったら試合回数が増えるほど負けが込んでいっただろう。
でも、ちゃんとしばき合っていた。

最後の最後で得点されたこと、ほんとに残念だ。でも、あれが入っておらず、PKで決着がつくより、ふさわしい幕切れだったと思う。
監督交代劇、事前の盛り上がり皆無、期待値ゼロの開幕、コロンビア戦の金星、セネガル戦前後の手のひら返し、ポーランド戦の批判、そして今回の熱戦。

感動という言葉でまとめてしまうのは、いささか単純すぎるのではないかと思う。

日本代表の試合をこれほど真剣に見たことはなかったし、自分にとってそれは、コロンビア、セネガル戦あってのポーランド戦を見たことがきっかけだった。オレだって、手のひら返ししてたんじゃないかと、内省的になった。考えさせられた。音を消して見たのは、その方が心を選手に近いところ置いて見られると思ったからだった。だから、音を復活したあと、監督と選手へのインタビューが始まったが、とてみ見てはいられなかった。

テレビを消した。考えるはやめにした。真剣に見た。見届けた。脳が痺れていた。5時だった。朝だった。3時間くらい眠れると思い、タイマーをセットして横になった。