グインサーガの新刊が出ていたので買う。もはや脊髄反応と化しているようだ。
電車の中で読むが、最近は速読というより斜め読みになってきている。
表現のくどさ、もはや飽き飽きしたお約束など、ここ5〜6年のグインサーガは別な意味で読者に忍耐を強いるようになってしまった。
それなのになぜ買うのかと言われれば、77巻も読んできてしまったからに他ならない。
77歳になって離婚はなかなか出来ないものだ。
完結予定は100巻。
最近の刊行ペースだと、3?4年後くらいには到達するだろう。
稽古場にて、シーンとシーンの合間にエロ本をパラパラめくる人が増えてきた。
(エロ補給)
もしくは、
(エロ呼吸)
と呼んでいる。
飯野が音響の調整をしている時、ふと阿部君を見る。
ぽつねんと立っている。
そばに寄ると、こっちをチラッと見た。
とても暖かそうだ。それに抱き心地も良さそうだ。
手を肩にかけようとした瞬間、我に返った。
何をやっているんだ俺は?
「阿部君、君、色んな人に抱きつかれるでしょ」
そう聞くと阿部君は、解脱した表情で「はい」とうなずいた。
「だろうな。俺も今、何気なく抱きつこうとしてたもん」
「男の人が多いんですよ」
「女の人はいないのかい」
「いませんね」
「どんな人に抱かれてきたの?」
「平戸さんが一番多かったです」
平戸君とは彼の大学時代の先輩である。
「そうか、平戸君ならわかる気がする。だって君、たたずまいが誘っているもの」
「そうですか?」
「宇原君だってしょっちゅう君に抱きついてるじゃないか」
「でも宇原さんはやさしいです」
「そうなの?」
「ええ、とても優しく僕を抱いてくれます」
「平戸君は?」
「とても優しく僕を抱いてくれました」
「ちなみにこの芝居で最初のシーンで、俺、君に抱きつくけど、あそこはどう?」
「うーん…」
「うーん?」
「ちょっと、激しいかも…」
色々な男に体を許してきた阿部君にそう言われるのは何だかとてもショックだった。
「わかったよ。もっと優しくしてみるよ」
そう言うしかなかった。
その頃中山君は激しくエロ呼吸を繰り返していた。