午前中、部屋の窓際にさしこむ強烈な太陽光に身をさらし、わずかながら日焼けをする。
午後、稽古場へ。昼は悠長にディスカッションをキメる。男女別だ。
マミちゃん曰く「女は難しいの」とのことだ。横で横岳がしみじみとうなずいていた。
「今まででさ、一番自分がかっこいいと思えた瞬間て、どんな時だい?」
と、男子諸君に質問したところ、中山君は言った。
「俺、いつもカッコいいんですよ」
横で竹内君は笑っていたが、ちょっと突っ込んで聞いてみることに。
「それは、カッコ悪いときもひっくるめて、トータルで自分がかっこいいってことかい?」
「ええ。ていうか、俺の場合、顔です」
「顔か」
「ええ。落ち込んだ時なんか、鏡の前でかっこいい自分を見て『まあ、俺はカッコいいからいいや』と自分を励ますんです」
そう言いきる彼の表情には一点の曇りもなく、すがすがしいほどだったので、なぜか敗北感を感じた。
夜、強引に前半部分を通す。女の子三人組みの不条理な会話のシーンが新しく追加される。
ゴールデンゴールデンゴールデンの三人はそのシーンに刺激を受け、自分達の決めポーズをリニューアルしていた。
今日は松本健がお休み。オギノ式が床に腹ばいになって健ちゃんへの愚痴をこぼす。
「健さんて、生活の泥臭さがあるんですよ」
「泥臭さ?」
いまいち意味がつかめないので質問する。
「それは生活臭ってこと?」
「まあ、近いっすけどね。場末の酒場にいる女みたいな感じですよ。自分のことを『アタイ』って呼ぶような女。」
「自分のことを『アタイ』って呼ぶ女は、確か絶滅したはずだよ」
「誰が言ってたんですか?」
「んー…政府っぽいとこ」
「とにかくそんな感じですよ」
「ふーん。要は、ベッドに生活を持ちこむ男、ってことかな?」
「まあ、そうですね」
すると、横から横岳が口をはさむ。
「健さんて、触られるのが嫌いみたい」
「君、触るの好きだもんね」
「ええ。好きです。わたし、人の体に触るの大好きです」
確かに彼女はやたらと女の子に抱きついたりしている。それを受けてオギノ式が言う。
「横岳さんて、とても南の国育ちに見えないよね。眉毛細いしさ」
「荻野さん、それ、偏見ですよ」
「だってそうじゃん。南の人は眉毛が太いよ。それに、横岳さんて、なんか北国で苦労してるって感じがする」
「私、バリバリの九州生まれですよ」
「でも、そう見えないよ」
どうもオギノ式は南の国への偏見を持っているようだ。そのことを尋ねると彼は答えた。
「南はいいですよ。寒さで死ぬことないんですから」
「そりゃそうだけどさ、北国だって山海の珍味が色々あるよ」
「ドカさん(塚本のこと)甘いな。南の島はね、腹が減ったら木になってる果物食えばいいんですよ?」
「君は南に偏見持ち過ぎだよ。南は南で色々大変なんだよ」
結局、南問題は決着がつかず、明日以降に持ち越しとなる。
中山君が、女の子三人のチーム名を考えてくれた。
キャンディキャンディキャンディ。
一発オーケーを出す。
夜、ダイナマイト写真ガイ、浅香真吾登場。差し入れにジュース。一同、獣のように喜ぶ。
マグネシウムの前回公演「夏の子プロ」の写真を受け取る。近いうちにこのHPでアップする予定。
稽古後、後輩の谷中さんに会う。彼女は現在大学4年生。後に新一年生を引きつれ、堂々と北大通りを闊歩していた。
「私、また芝居出ちゃうんですよ」
11月末だそうだ。
西葛西の実家に帰ると、食い物が何もなかった。実家に帰ってひもじいのは、ほんとにひもじい。