静かな電気

 一昨日は寒く昨日は暖かかった。
 そして今日は寒い。
 しかし気温が5度を下回る真冬の寒さではない。
 10度前後をうろつく切ない寒さだ。

 初霜、初氷、初雪と、冬の訪れのしるしは色々ある。
 これに、初電気を付け加えたい。
 つまり静電気だ。
 3年前から悩まされているのだが、よい解決方法を見つけられないまま今日に至っている。

 先週、静電気防止リングというものを買った。
 導電繊維が埋め込まれたゴムみたいなものを手首につけるのだ。
 これが全然効かなかった。
 寒くなり空気が乾いていたので、そろそろ初電気がくるかと呑気に構えていたら、トイレのドアノブでバチッときて、続けざまにコピー機でバチッときた。
 手首のリングははめたままだったのに。

 結局、静電気防止キーホルダーを常に手に持ち、金属部分に触れる時はすべてそれを介することでやり過ごすしかない。

 ただ、今日は着たシャツにも原因がある。
 アクリルとポリエステルの生地だったからだ。
 やはり綿100でないといけない。
 一度持っている服の繊維を総点検して、素材別により分けてみよう。

 静電気に怯えて一日を過ごしたらとても疲れた。

 夜、イカスミのスパゲティを食べる。
 唇と歯と舌とフォークとスプーンと皿が真っ黒になった。
 イカスミのスパゲティを食べたのは初めてだ。
 思っていたよりあっさりしていておいしかった。

 ペペロンチーノのスパゲティばかり飽きずに食べる人がいるように、イカスミのスパゲティばかり食べる人もいるだろう。
 胃袋はきっと真っ黒だろう。
 その人がもしも吐いたら、映像的にかなりグロテスクだ。

 2時間ばかり眠った。
 疲れはややとれたが、眠気は去らなかった。
 肉体的ではなく精神的な疲れだった。
 何もする気がしなかった。