暗いうちに目が覚めた。時刻を確かめるため、壁際のコンセントで充電しているスマホのところへ行こうとしたが、布団をめくると部屋の空気がずいぶん冷たくなっていたので、やめた。たぶん2時か3時、そのくらいだったろう。
次に目が覚めた時も外は暗かった。今度は起きてスマホのところまで行き時刻を見た。5時だった。昨日寝たのが9時半だったから、7時間半は眠ったことになる。
今日は、特に予定はなかった。どこかで紅葉を見ることができればそれで良かった。撮影するために先日買った一眼レフ、オリンパスOM-2を持ってきていた。それの使い初めという意味合いもあった。
一応、事前に行きたいところを調べてはいた。赤城山、桐生のひもかわうどん、草木ダム近くの自販機コーナー。
一番遠いのが、自販機コーナーだった。道沿いにぽつんとあり、うどんやラーメンの自販機があるらしい。
まず、そこまで行って朝飯を食べ、赤城山に登って紅葉を見て、桐生でひもかわうどんを食べる。お昼までのスケジュールを大体そのように決めた。
荷造りをし、5時半にチェックアウトした。
外は寒かった。車はすべての窓が曇っていた。デフロスタースイッチを入れ、曇りを取り除いた。メーターを見ると、車外の気温は4度だった。
ナビを丸美屋自販機コーナーにセットした。草木ダムの手前にある自販機コーナーだ。
走っているうちに夜が明けてきた。進行方向が東だったので、太陽を正面から見ることにならなければいいがと思っていたが、太陽が昇る前に進路が南に転じた。
7時過ぎ、丸美屋自販機コーナーに着いた。
先客が二人いた。うどんを食べていた。自販機をざっと見て、うどんを食べることにした。
コインは500円玉が使用不可だった。いつの時代に作られたものだろう。100円玉を3枚投入すると、30秒でうどんが出てきた。天ぷらは、当たりだとえび天がのるらしかったが、かき揚げが乗っていたから、たぶん外れたのだろう。
意外なことに、うどんは大変美味しかった。特に汁が旨かった。かつおの出汁がしっかりと効いていた。
建物の外にハンバーガーの自販機があったが、すべて売り切れていた。190mlの瓶コーラ自販機もあった。すべて、昭和の時代、フードコートなんて気の利いたものがなかった時代に、大きいスーパーの片隅に置いてあったようなものだ。
客の回転は大変良かった。名物スポットになっているのだろう。地理的に採算がどうこうというロケーションではないし、ドライバーからは重宝がられている。メンテナンスは大変だろうが、こういう施設は文化なので、守っていかないといけない。政府が「守っていかないと」なんて、余計な気づき方をする前に。しないけど。
ナビを赤城山にセットし、車を出した。
山頂へのワインディングロードを延々と運転する。道幅は当然それほど広くはなかったが、対向車とは無事にすれ違うことができた。
9時半、山頂に到着。パーキングがどこも混んでいた。赤城神社の参詣者用駐車場はあいていたので、車をそこに止めた。
OM-2 で、周囲の写真を撮った。湖、紅葉、神社、山々など。
このカメラは、世界初のTTLダイレクト測光を搭載しているのだが、考えてみればオレが持っているPENTAX ME SUPER にも、搭載されていたんじゃなかったか。ME SUPER が発売された時代には、一眼レフカメラのオート露出測光のトレンドになっていただろう。
しかし、その威力はおそらくストロボ撮影にこそ発揮されたのだと思う。シャッターを押した時点の、スルーザレンズ光量に応じてストロボの光量も自動調整するなんて、夢の機能だったろう。子供のころのわしにはわからんかったが。
スマホでも撮った。
神社でお参りをし、車を出す。10時だった。
ナビを、桐生市の『しみずや』にセットした。ひもかわうどんが名物らしかった。
下りのワインディングロードを延々と下り、『しみずや』の駐車場に着いたのは、11時5分頃だった。店に行き、入口の扉をあけると、すでに満席だった。
店の外で、席が空くのを待っていると、松本から来たというおっちゃんが話しかけてきた。テレビで娘が見て、行きたいと言うので、今朝7時に車できたのだという。
しかし、娘ちゃんは、待つのが面倒になったらしく、「ここじゃなくて他の店いこーよ」的なことをパパに言い、パパは、「え? だってお前、この店がいいって、うん…うん…しようがないなあ…」という感じに尻すぼみしていき、車でどこかに行ってしまった。
そのすぐ後、食べ終わったお客さんが店を出て、席が空いた。
ひもかわの鶏南蛮と、ソースカツ丼の小を頼んだ。
ひもかわうどんは、旨かった。朝食べた自販機うどんと同じく、汁が大変美味しかった。ソースカツ丼も、カツの肉が柔らかく、こういうカツは卵とじではなくソースカツ丼にした方がいいのかもしれないと思わせた。ていうか、それがソースカツ丼のレゾンデートルなのだ。今分かった。
食べ終わり店を出ると12時だった。車を高崎に返却するのは15時半だった。もう、そんなにうろちょろはできなかった。
で、高崎に戻る途中にある、高津戸峡へ行ってみることにした。渡良瀬川の手頃な渓谷らしい。
12時40分、高津戸峡に着いた。遊歩道から渓谷に降りた。
ポットホールという、流れが岩を削ることでできた、渦潮のごときものが、観光的な意味での名所らしかったが、渓谷はきれいであればいいというのが、オレの意見だ。ゴミが落ちておらず、自然が正しく守られ、静かで、四季がよくわかれば、あとは好きにしていいと思う。
上流にダムがあり、流量はそこでコントロールされているようだった。
駐車場で地元の物産を販売していたので、ひもかわの乾麺と、ドーナツみたいな菓子を買った。
1時40分頃に駐車場を出る。ナビを高崎にセットした。
昨日の渋滞が頭にあったので、ルートは高速を使った。
レンタカーに到着したのは15時過ぎだった。高速を使って正解だった。
この後、夕方6時までどこかをうろうろしてから、『デルムント』という洋食屋で、ハンブルジョアというスパゲティを食べようと考えていたのだが、観光には時間がなく、ただ待つには長すぎるというタイミングだったので、今回はパスすることにした。『しみずや』のひもかわで、美味しいものを食べる欲求は満たされてもいた。
で、駅の成城石井でビールを買い、ゆっくりグリーン車で帰ることにした。
上野東京ラインに乗った。さすがに空いていた。
車中、『永遠の最強王者 ジャンボ鶴田』読む。時代順に読み進み、天龍革命から三沢の鶴田越えあたりまで。三沢の鶴田越えは、当時としてはかなり唐突なものだったことが改めてわかった。そして、結果的に期待にこたえた三沢はすごかったなと思った。
何よりも、天龍や三沢は、鶴田が作ったようなものといっても過言ではないと、改めて思った。
赤羽で埼京線に乗り換え、新宿から地下鉄で6時半帰宅。
シャワーを浴び、サミットへ行き生牡蠣を探すが、売っていなかった。ビールと冷凍お好み焼きを買って帰る。
日本シリーズ第6戦見る。
オリックスは山本由伸が先発だったが、1点を先制されていた。その裏にオリックスが2点を入れすぐに逆転したあと、5回からの山本は三振をどんどんとるようになり、投球テンポもよくなり、阪神打線につけいるすきを与えなくなった。本来の山本由伸に戻ったような感じだった。
見方はその後も得点を重ね、5対1となった時点で、勝負あったと思った。山本はそのまま完投した。
今日行った場所をGoogleマップで調べていると、朝に行った丸美屋自販機コーナーの道を、大昔、4歳の頃に通ったことがあるのではないかということに思い至った。
ゴールデンウィークに、父の親類である家族と桐生で観光した。なぜ桐生だったのかわからない。上野から普通に乗り、夜にどこかの宿に着いた。その夜、中耳炎になった。翌日、病院に行き、草木ダムを見に行った。雨だった。その夜は別のホテルに泊まった。翌日、大人たちはホテルにあるボウリング場でゲームをしていたが、オレは当然、見ているだけだった。その後かその前か、河原で遊び、午後、電車で帰った。地図から考えると、行きは高崎線と両毛線を使ったのだろうか。ダムを見に行く時は、父の親類が運転する車に乗った記憶があるので、高崎からは車に乗せてもらったかもしれない。
その旅行で草木ダムを見に行く時に、たぶん、丸美屋自販機コーナーの前の道を通ったはずだが、オレが4歳の頃なんて、まだ蘇我入鹿がピンピンしていてたくらいの大昔なので、まだ自販機コーナーはなかっただろう。その後大化の改新があって、自販機コーナーが作られて、現在に至るという歴史の流れだ。
1時半就寝。