秋山準を怒らせる価値

 一年で一番暑いと勝手に思い込んでいる8月第一週を過ぎたら、案の定暑さは峠を越えたようだ。
 天気は曇り。
 もちろんまだ暑いけど、汗が出るのは湿度の高さが原因だと思う。

 夕方、西荻窪の定食屋でサービスセットを食べた。
 ついてくる小ラーメンがまずく、メインのおかずも普通の味だった。
 自分で作った方が好みの味にできる。
 しかしその店は仕事帰りのサラリーマンで結構混んでいた。

 阪神が中日に勝った。
 昨日、今日と2連勝だ。
 初戦の大逆転負けがあっての2連勝が示す意味は極めて大きい。
 キーワードはだろう。
 相手の押せ押せムードに引きずられず、中継ぎから抑えの投手力を駆使するといった得意の野球で勝ち越すのは、言ってみれば王者の勝ちパターンだ。
 選手たちが得た自信はドラマチックな勝利よりも大きいだろう。

 2001年7月の、プロレスリングノア武道館大会の映像を見る。
 この大会のメインで、秋山が三沢からGHC王座を奪った。
 この時期の秋山はミーハーなファンを寄せ付けない空気を身にまとっていた。
 そのストイックかつ非情な態度は、観客の秋山コールを拒絶するほどの厳しさがあった。
 逆にいえば、そうした態度がたまらなく好きなファン層というのもまたあるわけで、そうしたファンは小橋ファンや三沢ファンに比べるとより悲鳴に近い声で秋山の名を叫ぶのだ。

 秋山ファンは男性が多いと思う。
 先日のドーム大会で、隣にいた4人組の若い兄ちゃん達が、
 「(橋は)秋山が男にしてくれるって」
 「秋山に期待するしかねえよ」
 「ああいう先輩いたらいいよなあ」
 と話していたが、その口調は尊敬する部活の先輩について話す体育会系の1年生そっくりだった。

 この試合で秋山はGHCヘビーのベルトを巻き、やがて新日本の永田と結託し、新日本のドーム大会に乗り込む。
 さらにはベイダー相手にベルトを防衛するなど、今思えばノアの旗揚げ以来もっとも派手に活動していたのがこの年だった。

 そんなことを思いながら試合の映像を見た。
 三沢の動きが今よりも速く、感情のこもった表情で秋山にエルボーを見舞っていた。
 どんな感情かといえば、生意気な後輩をシバく時の感情だ。
 怒りに似ているが、怒りだけではない。
 そういう表情を三沢が見せたのは、ドームでの川田戦を除けば最近ではほとんどない。
 解説が当時欠場中の小橋というのも、今見ると感慨深いものがある。

 リストクラッチ式エクスプロイダーで三沢からフォールを奪った秋山は、ファンへの礼とこれからの豊富をマイクで手短にアピールしてリングを降りた。
 インタビュアーはほとんどなにも質問できなかった。
 花道を退場する秋山は、決して怒っているわけじゃないが、気軽に背中を叩いたらぶん殴られそうな雰囲気があった。

 高山善廣のサイトで、先日の秋山・柴田戦について、秋山が試合で見せた恐さを、力皇や森嶋にも味わわせてあげればいいのにと書いてあった。
 しかし、秋山の方から下のレスラーに無条件で恐さを見せるのは、むしろ甘やかしのような気がする。
 そういえばノアの身内で、秋山に噛み付く選手が最近いない。
 せいぜいKENTAくらいか。