寿司

マグ不足を始めたきっかけは、ない。
「マグネシウム不足というミニ公演をしよう」
そう思って名付けたのではなく、2011年1月に初めて一人芝居をした時に、
「マグネシウムリボンって名乗るのは、なんだなあ」
と思って、色々不足しているから、名付けたのだ。

もしずっと前に一人芝居をやっていて、マグネシウム不足と名付けていたら、「夏の子プロ・粗忽重ね」「アシュラシュシュ」「1:1」「六月の魔女」はマグネシウム不足公演として上演していただろう。

本公演のワークショップ的なものにしたいと思ったのは「テキストファイル」の時だった。
広めの稽古場を使い、役者があちこちで自主練をする環境を作ってみたかった。

ある人から聞くと、
「本稽古をしているのに横から自主練の声が聞こえすぎるのはどうかと思った」
とのことだった。
別の部屋が取れれば良かった。

都内の稽古場環境はなかなかシビアなので、同日に二つの稽古場を取得するのは、予算的にも予約的にもなかなか難しい。

昼、西荻窪の「天下寿司」へ。
2月からずっと「寿司ブーム」が続いている。
回転寿司もピンキリなので、直接職人さんに注文してその場で握ってもらえるような店は、そこそこ美味しい。
荻窪の「元祖寿司」も同じで、都度握ってくれるので美味しい。

高い寿司屋に一人で行ったことがない。
相当昔になるが、両親とそれなりの店に行ったのが最後だ。
「最初に特上を頼んで、その後好きなもの頼むのよ」
と母は言っていた。
おまかせの代わりに特上を頼むのが、母親流だったのだろう。
あるいは、おまかせのない店だったか。

生まれて初めて寿司屋に行きたいと思ったのは、アニメ『ど根性ガエル』を見てからだった。
ひろしが小遣いを貯めて寿司を食べるエピソード。
「寿司と言ったら宝寿司、男といったら梅三郎」
寿司屋の梅さんに握ってもらうが、その時のために貯金したお金が10円ばかり足りなかった。
「知らねえ仲じゃねえし、いいよそんくれえ」
と梅さんは言うのだけど、ひろしは義理堅くも働いてその分を返すと言う。
そうかい、じゃあ出前を頼まあ、と、寛は寿司の出前を頼まれる。
届け先はというと、自分の家だった。
寿司が食べたいといっていたひろしのため、母ちゃんが頼んだのだ。
ひろし、がっくり、という落ちだった。

で、新宿の寿司屋に連れて行ってもらったのだ。
小学校二年か三年の時だった。

それまでは、寿司というものを積極的に食べたいと思ったことはなかった。
父の会社の社長さん宅に行くと、必ず出前の寿司が出たが、マグロと玉子しか食べられなかった。
バカなガキだった。

以来、寿司が嫌いだったことは一度もないが、積極的に食べたいと思ったこともない。
それが最近、食べたくなっている。
グルメ指向としてじゃなく、空腹を寿司で満たしたい欲が高まったとでもいうべきか。

武蔵小金井に住んでいた時は、北口に回転寿司屋があり、給料日や臨時収入があった時などに利用していた。
最近たまに行く「天下寿司」「元祖寿司」より、味は落ちていたと思う。

夜、西荻南にて稽古。
上岡君と知恵ちゃんが休みのため、4人で代役を立てながらやる。
小さい稽古場だが、4人となると寂しい。

「車内」のラストで、大黒摩季の歌を歌うことにしたが、曲を何にするか迷う。
「おおぐろまき」という言葉の響きが、状況にぴったりだったのだが、選曲が難しい。