朝、荻窪の「天亀そば」でカツ丼。
10時小屋入り。
カーテンコール作りをし、ゲネプロの準備に入る。
潮田くんに、今日郵送されるはずのチケットが届かないと言われる。
申し込みをしたメールを確認したが、日付も配送場所も間違ってはいなかった。
ゲネプロやっている最中に届くと思うから様子をみようと伝える。
写真撮影の浅香到着。
客席に案内し、舞台の説明と雑談を少し。
2時にゲネプロ開始。
冒頭のエレベーター場面でとちりがあり、気負いが裏目に出る感じの始まりだった。
前半から中盤まで快調に進む。
後半になると、見えないブレーキが知らず知らずかかったように、場面がまったりとする
時間は2時間5分だった。
ゲネ中にもチケットが届いていなかった。
印刷会社に電話をすると、宅配便サイトのステータスは「配達済み」になっているという。
配達先を間違えたのか不安になる。
一昨日、マグの携帯に着信があった。
劇場の場所がわからず道に迷っているという。
お客様の問い合わせかと思ったが、一昨日は仕込み初日でまだ本番は始まっていない。
「いまどのあたりにいらっしゃいますか?」
劇場の外に出てナビをすると、やってきたのは酒屋の「カクヤス」の配送スクーターだった。
同じようなことがないとも限らない。
もう一度印刷会社に電話をし、業者に確認してもらう。
撮影が終わった浅香とロビーで話す。
刷り上がったパンフレットを見て笑っていた。
マグネシウム不足の今後の予定にある、公演タイトルがツボにはまったらしい。
「『マグネシウムのリボンが光る』っていいねえ。内容変わってもいいからタイトルは変えないで」
秋は忙しいらしい。
夏の同窓会飲みでは会えなかったが、店に行こうとはしたようだが、連絡ミスですれ違いになってしまった。
印刷会社から折り返しの電話がきた。
配送の担当者はすでに劇場近くにいるため、サイトのステータスが先に「配送済み」になっていたという。
「もう間もなく配達されると思いますので」
まさにその時、宅配便の人が来た。
「今来ました。ありがとうございました」
電話を切る。
「ここ、何なんすかあー?」
配達の人はきょろきょろしながら劇場ロビーに入ってきて、好奇心あふれるまなざしで見回していた。
「劇場なんですよ」
「へえー! 前から気になってたんスよー」
潮田君が伝票にサインをした後、チラシを渡して言う。
「よかったら、今日本番なんで」
「うわー、来ようかな?、ありがとうございやしたー」
へらへらしていたが、妙に愛嬌のある人だった。
「男の人かな?」
つぶやくと、
「女だよ」
「女ですよ」
浅香と潮田くんが同時に言った。
本番への準備を進める。
ヘアメイクの亜企ちゃんに、髪をやってもらう。
「塚本さん、なんだか、前より髪が細くなってません?」
「そうかも」
「ですよね。コシがなくなったっていうか」
「プール通いして、塩素にさらされたからかなあ」
ゲネプロ後の浅香にも、白髪のことを言われた。
ちゃんとした食事、睡眠、そして頭皮ケア。
まともな生活を取り戻せというサインだ。
開演前、舞台に集合し、挨拶をする。
本番前にいつも、演出として主宰として何か言うのだが、今回は稽古中からずっと、言葉をうまく見つけられない苦労があった。
言葉にできないものを言葉にせず、思いついたまま形にしようとやってきたせいかもしれない。
そのため、言葉で説明しようとすると、喋る前に頭にあったものが、規格品になってしまうように感じる。
それが気持ち悪く、他に言葉はないか探すうちに時間が経ってしまう。
だが公演ごとに違う。
去年の「毒薬」の時はむしろ能弁だったと思う。
言葉の説明を多く使って稽古をしてきたからだと思う。
開演直前まで舞台裏の暗がりに座って待つ。
集中するためと思われがちだが、ただ好きだからそうしている。
なぜ好きなのかはわからない。
芝居に限らず、暗がりにじっと座っているのは好きだ。
体が空間に溶け込み、なじんでいくような心地がする。
芝居においては、客席が少しずつざわめいていくのを感じるのが好きだ。
押すことなく7時ちょうどに開演。
エレベーター場面で台詞のとちりがあり、場面に出ている8人に緊張が伝わった。
芝居の呼吸が乱れたまま次の場面へ。
楽屋には戻らず、舞台裏で様子をうかがう。
潮干狩登場あたりから徐々にペースが戻ってきた。
中盤、ゆずの司会シーンを過ぎてからは、後半をテンポ良く進めることができた。
上演時間は2時間4分だった。
ゲネプロでは前半が良く、本番は後半が良かった。
二つの良いところが合わさるのが理想的なのは、言うまでもないことだ。
旧知の山口圭三くん来る。
会うのは3年ぶりくらい。
所属していた劇団を辞めるらしい。
「方向性が違ってきて」
とのこと。
芝居は続けるという。
落ち着いたら飲もうと約束する。
日暮里駅前の「千年の宴」にて初日打ち上げをする。
潮田くんと受付チームの皆さんと話す。
今日入ってくれたのは、潮田君の仕事仲間とのこと。
普段芝居を見たりすることがあまりない人たちだったので、感想を聞くのが新鮮だった。
亜企ちゃんの仕事先の方々が別テーブルで飲んでいた。
挨拶にうかがうと、「四谷さん」と言われた。
6年前に亜企ちゃんの書いた芝居でやった役名だ。
その頃からたびたび、マグの芝居を見に来てくれているそうだ。
宣伝美術の細田くんの隣へ。
今回はパンフレットのデザインもやってもらった。
田中太郎のご挨拶分を、ゆらゆら流れるように配置してくれた。
面白いデザイン。
台本には出てこない田中太郎が、そこにいるみたいだった。
12時に店を出る。
尾池さん、細田くんと一緒に帰る。
1時帰宅。
風呂に入り、印刷作業を少しして、3時前に就寝。