朝5時半に起きた。
新宿まで行き、東口で荻野君と待ち合わせる。
靖国通りで鏡田君の運転してきた車に乗り、そこから西荻窪へ。
駅の北口でイーノ君と関君を乗せる。
次に俺の家に寄り荷物を載せ、環八から関越自動車道経由で長野に向かう。
上信越自動車道に入ってから、荻野君と運転を代わってもらう。
男5人の乗った車内はさすがに狭かった。
9時過ぎに長野に到着した。
荻野君が宇原君に電話をかける。
須坂から車で来ているという彼と待ち合わせ、白馬まで一緒に行くことになった。
町をぐるぐる回り、落ち合うまで40分近くかかってしまった。
久しぶりに会う宇原君はとても元気そうだった。
白馬に向かう途中、深山というべき山々を見ながら、
「ああ、登りてェ」
と関君はヤクザ口調でつぶやいた。
白馬樅の木ホテルに着いたのは11時過ぎだった。
予定よりは遅れたが、それでも式の開始まで1時間半もあった。
空はよく晴れていて、空気はいい匂いがした。
部屋にチェックインし、礼服に着替える。
早速竹内君が宇原君に余興の振り付けを教え始めた。
式は人前式だった。
指輪の交換、近いの口づけと、滞りなく進んだ。
口づけをする中山君が、キツツキのように見えた。
披露宴はホテルのレストランで行われた。
我々のやる余興は、歌と踊り。
大塚愛の『さくらんぼ』を美和ちゃんとはしぐちさんが歌い、後ろで竹内君とイーノ君と宇原君が踊る。
曲の途中で無音の間があり、それを合図に新郎の中山君が立ち上がり、中心になって歌いだすという段取りだ。
来賓の挨拶、乾杯と続き、我々は料理を食べ始めた。
途中、親戚の方々の挨拶が入る。
中山君の叔母様がされた挨拶は、メリハリのきいた関西弁が聞いていて心地よく、一同聞き惚れてしまった。
挨拶の最中、宇原君は時々両手を小さく動かして、振り付けを確認していた。
そして我々の番が来た。
関君、荻野君、そして俺は、鈴やタンバリンを鳴らしてサポートした。
中山君が登場し、会場は盛り上がり、写真を撮る人が舞台にかぶりついた。
俺も動画や写真を撮ろうと思っていたのだけど、鈴をシャンシャン鳴らすのに夢中ですっかり忘れてしまった。
終わってから、歌い踊った皆は拍手で迎えられていた。
大きな失敗もなく、とても良い余興になっていた。
宇原君や鏡田君のサポートをした竹内君がMVPだろう。
踊り終わったはしぐちさんが、妙に艶っぽい顔で額の汗をハンカチでふいていた。
デザートはテラスでのバイキンsグ形式だった。
ウエディングケーキやフルーツを食べ、おいしいコーヒーを飲んだ。
新婦から両親への手紙朗読が始まった。
宇原君と荻野君の極道コンビも、大人しく聞いていた。
新郎新婦が花束を両親に渡し、中山君が友人知人への挨拶をする。
幾人かが涙目になっていた。
涙目になるのを忘れてカメラにおさめた。
招待客のメッセージを入れたタイムカプセルを埋める儀式が済み、披露宴は無事終了した。
部屋に戻り、ラフな格好に着替え、ベッドで2時間ばかり眠った。
二次会は7時から離れのレストランで行われた。
参加者は我々芝居関係者だけだった。
料理は我々の倍の人数をまかなえるほど用意されていた。
リラックスしたムードで皆が飲み、食べた。
中山君達も友達を沢山呼びたかっただろうが、会場の広さや親戚の方々の多さを考えると、この人数が限界だったかもしれない。
10時に二次会が終了した。
部屋に戻り、露天風呂に入り、三次会となる中山夫妻の部屋に行く。
二次会で余ったチーズや日本酒、そして自販機で買ったビールを飲みながら、馬鹿話、思い出話などを色々した。
中山君も緑ちゃんもくつろいでいたが、さすがに疲れているようだった。
「そろそろ、おいとましますか」
という宇原君のささやきをしおに、起きているメンツは四次会会場に移った。
四次会は宇原・荻野の地獄部屋で行われた。
参加者は竹内君、美和ちゃん、鏡田君、俺、そして宇原君と荻野君。
新郎新婦のいない席ということで、話は飛びに飛んだ。
宇原君と美和ちゃんは、恋愛について激論を戦わせていた。
3時半頃、さすがに眠気に耐えられなくなり、部屋に戻った。
ドアではなくベランダから窓伝いに隣の部屋に戻ったのは、やはり酔っぱらっていたからだろう。
部屋では鏡田君が一足先に休んでいた。
電気を消し、布団を被ったところまでしか覚えていない。