渚のシンドバッドという男

朝4時に起きた。外に出ると明るくなりかけていた。
朝飯に食べた納豆のネバネバ部分を水に溶かし、水耕栽培の容器に足した。納豆菌は水質改善に良いらしい。効果はわからない。とにかくやってみた。

午前中、ツール作りの話し合い。予想とは全然違ったツールを頼まれたが、難しいものではなかった。
昼飯に西新宿の「サラダニース」へ行き、洋風ハンバーグを食べた。 サラダ大盛りが売りだったが、ハンバーグと同じ皿に盛られているので野菜から水分が出てソースが薄まるのが気になった。

午後、新しいツール作業をするが、4時頃にエネルギー切れを起こす。昼食後の眠気が尾をひいていた。

6時半帰宅。
うまいこと安値で買った、アーロンチェアが届いた。三年ぶりに普通の椅子を机にセットする。座りやすさはまだわからない。

ピンクレディーのことを考えた。
絶頂期は1977年だった。「カルメン77」から「ウォンテッド」まで。
「UFO」は、売れたのが1978年の初頭だ。以降の曲は「サウスポー」「モンスター」「透明人間」と、だんだん子供向けになっていく。

しかし77年の時点では、ちゃんとした歌謡曲を歌っていた。特に「渚のシンドバッド」と「ウォンテッド」がいい。

伊藤蘭はキャンディーズ時代、自分達がアイドルであるという自覚をもっていなかったという。そういうカテゴリー分けがされていない時代だったというが、曲を聞いていけばうなずける。今でいうところのアイドルソングは歌っていない。「年下の男の子」も、出来の非常に良い和製ポップスだ。

しかし一曲だけ、アイドルソングとしか言いようのない歌を歌っている。「暑中お見舞い申し上げます」がそれだ。衣装、振付、曲、どれをとってもアイドルそのもの。この曲が発売された直後、あの解散宣言が出されたのは皮肉といえよう。

ピンクレディーもアイドルソングを歌っていない。せいぜい 「S・O・S」と「渚のシンドバッド」が、それに近い曲といえるだろう。

「渚のシンドバッド」の歌詞は、男にナンパされ、流されてキスまで許しちゃったギャルが、本番になだれ込む前に今の気分をツイートしたみたいな内容である。「ビキニがとってもお似合いですね」と知らない男が肩を抱いてきたら普通は張り倒すと思うが、「馴れ馴れしいわ」と思った時にはもうキスされている。よほどイケメンだったか、それとも奴は、体を麻痺させる毒液を唇から分泌するタガメみたいな男だったのか。「S・O・S」では、「男は狼なのよ気をつけなさい」と歌っていたのに。さすがタガメ。田んぼの王者の名は伊達じゃない。

しかし、ここでタガメに体を許してしまったことが、のちのピンクさんに大きな影響を与えている。シングル曲を時間順に検証してみよう。

76年の「S・O・S」では、どんなに安全そうな男でも「うっかり信じたらダメ」と、身持ちの固さをアピールしているが、「カルメン77」では相手をメロメロにさせてやる宣言をしている。その間に、どうやらCまでいったっぽいっすな。でも、Cまでいったからって急に大人になれるもんじゃない。 自分をカルメンに見立てるところに、背伸びしているような固さが見られる。

そしてやって来た77年夏。「渚のシンドバッド」の舞台は海。おそらく女だけ。カルメンになって男に振り向かせる作戦は失敗したのだろう。ナンパされるのが目的とすれば新島だろうか。そして首尾良くシンドバッドにナンパされ情を交わすが、次の曲「ウォンテッド」の歌詞から判断するに、その男には逃げられたと思しい。

「UFO」の歌詞は、「ウォンテッド」の男を見つけることができなかったことを示唆している。「地球の男に飽きた」は、男なんかいらない宣言に等しい。「サウスポー」では、男なんかより王選手のホームラン見てる方がいいわと野球に逃避する。

「モンスター」では、歌詞の主体が自分ではなくなり、周りでキスをしているカップルに対し「そこのけそこのけ」と歌っている。カップルにとってのピンクレディーこそ、モンスターであるという関係性なのだ。残酷な夏の日の1978。

そして秋。消え入いりたい気分は「透明人間」の歌詞「消えます消えます消えます」になって表現される。ピンクレディーは、消えたくて消えたのだ。それは「渚のシンドバッド」に出てくる男のせいだったのだ。

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