紅白と格闘技

 昼に起きてからマラソンをした。
 柔らかい日差しの下、野川公園まで往復した。
 シャワーを浴びてパンとシチューを食べる。
 あとはすることはなかった。

 年末は特に忙しくはなかった。
 しかし台本は結局1ページも書かなかった。
 そのことを考えても苛々するだけなので、年を越すことだけを考えた。

 夕方、かつお節を削って出汁をとり、うどんを茹でた。
 そばアレルギーなので年越しそばは食べられないのだ。

 うどんを食べてから紅白を見た。
 パソコンの電源を入れて、PRIDE、猪木祭り、K-1も見られるようにした。
 紅白は特に面白くはなかった。

 K-1の目玉はボブ・サップと曙の戦いだった。
 国歌斉唱でスティービー・ワンダーがハーモニカひとつでアメリカ国家を演奏した。
 ボブ・サップの表情からは限りない興奮と恍惚が読みとれた。
 おのれの肉体一つを頼りに異国で戦い続け、ついにあのスティービー・ワンダーに国歌を演奏してもらうまでになった誇りと感動が伝わってきた。
 いい映像だった。

 K-1でゴングが鳴り、紅白では長渕剛が歌い始めた。
 曙は巨体を利するためひたすら前に出続けた。
 しかしコーナーに追いつめられたサップのパンチが曙に当たった。
 曙はダウンした。
 カウント9で立ち上がった時は拍手が聞こえた。
 しかし1ラウンド残り10秒を切ろうという時、サップの右強打が顔面をとらえた。
 縄を切るような音が聞こえた。
 曙は再びダウンし、レフリーは試合を止めた。
 長渕剛の歌は間奏にさしかかっていた。

 曙の敗北は多くの格闘技ファンにとって予想通りだったろう。
 数ヶ月のトレーニングだけで曙が勝ってしまっては、K-1の競技性が失われてしまう。
 ほっとする人の方が多かったと思う。

 猪木祭りでは永田がヒョードルに負けた。土壇場で決まったカードなのでこれは無理もないだろう。
 その代わり藤田がきっちり立ったままで肩固めを決め勝利した。
 PRIDEではパンクラスの近藤と元リングスの田村がきっちりと勝ったのが嬉しかった。
 その代わり元Uインターの桜庭は負けてしまった。

 紅白は白組の圧勝に終わった。
 審査員のすべてが白に投票するという異常事態は、まるで格闘技のような結果だった。

 紅白が終わってから小金井神社へ初詣に行った。
 願い事は毎年同じ。
 「とにかく健康を。それから芝居運よろしくおねがいします」
 お神籤を引くと去年と同じ中吉だった。