人と話すのが久し振り

 夕方までとにかく暇だった。

 平日は朝から夕方まで仕事をしているのだが、日記に仕事のことはなるべく書かないようにしているのだ。
 いつから、そしてなぜそういう風にしたのかは忘れた。
 たぶん2年くらい前からそうしてるんじゃないか。

 夕方まで暇だったというのは、つまり仕事が暇だったというわけ。
 やることをやり尽くしてしまい、手のほどこしようがないほど暇だった。

 だからといって温水プールに行って泳いだり、図書館で本を読んだり、行列の出来るラーメン屋に並んだりなんてことはできない。
 その時間は仕事の時間だから。

 で、仕事がないのに仕事をしているフリをする。
 これが苦しい。

 結局、ネットサーフィンに落ち着くわけだ。
 ゲームはできないし。
 メールもちょっとまずいから。

 こういう時に役立つのはやはりテキスト量の多いサイトだ。
 <読み物>として使える。

 高校教師をされている方が講義内容をまとめたサイトがあり、それを夕方まで見ていた。
 歴史好きにとっては大変有効な暇つぶしになる。
 失った知識の補填にもなる。

 夕方まで歴史の知識を増やしてから中野に行く。
 丸井のエスカレーターで岡田遊ちゃんとばったり会う。
 無印良品に用事があるらしかった。

 Orange PunPKing の開演時間が7時半だったので、差し入れのお酒を買っても時間は余った。
 腹を満たすことにした。
 大勝軒のつけそばを食べる。

 7時半からOrange PunPKingの芝居を見る。
 8月にマグネシウムリボンに出た三代川が出演している。
 妙に顔がつるんとして、こざっぱりしていた。

 終演後、飲みに行く。
 こういう席で人と話すのは、なんとひと月ぶりだった。
 そんなに長く人と話さないと、喉が退化するんじゃないか。
 役者としてやばい。

 片桐が舞監をやっていた。
 舞台に使うスプレー糊に3万くらいかかったそうだ。

 三代川と自主練の話をする。
 「腕の筋肉落ちちゃってさ、最近腕立てやってるよ。今月頭に腕立てやった時にさ、筋肉がものすごく落ちていたんだ。7回くらいしか出来なくて、さすがにやばいと思って」
 三代川は目を丸くした。
 「7回はヤバイっすよ。20回は意地でも頑張りますよ僕」
 「でもさ、走ったりとかはいいんだけど、発声練習はちょっとできないよね」
 「僕、休みの日に学校行って自主練したんですよ」
 「誰かいた?」
 「いませんでしたけど」

 確かに、大学の構内なら発声練習はできる。
 違和感はそれほどないし、民家に迷惑もかけない。

 12時に辞去する。
 片桐は埼玉の実家を出て、10月から鷺ノ宮に引っ越した。
 そのため自転車で中野に来ていた。うらやましい。

 横岳さんと途中まで一緒に帰る。
 彼女も4月か5月に西荻窪に引っ越したのだ。
 「いいっすよ西荻」
 「いいだろうね」
 「ドカさん、今の部屋どのくらいですか?」
 「もう8年だよ。いい加減出て行きたいんだけどさ」
 引っ越そうとするたびに芝居があったりして、なかなか果たせないでいる。
 駅から歩いて7分ほどだし、住む分には不自由していないので、せっぱ詰まっていないのも大きい理由だ。
 でも、さすがに飽きる。